「ユースケース」という言葉は、ITやAI、システム開発などの場面でよく使われます。しかし、「使用例や活用事例と何が違うの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
ユースケースとは、簡単にいえば「誰が、何の目的で、製品・システム・技術をどのように利用するのかを具体化した利用場面」のことです。
たとえば、生成AIについて単に「文章を作成できる」と説明するだけでは、具体的な使い方は分かりません。「営業担当者が商談後のお礼メールの下書きを生成AIで作成し、内容を確認して送信する」とすれば、利用者や目的、使い方が明確になります。
この記事では、ユースケースの意味や仕組み、具体例、作り方を初心者にも分かりやすく解説します。
ユースケースとは?
ユースケースは、製品やシステムを「誰が・何のために・どのように使うのか」を具体的に表したものです。
また、IT分野で使われてきた考え方ですが、現在ではAI導入や新規事業、業務改善など、幅広い場面で「具体的な利用用途」という意味でも使われています。
簡単にいうと「具体的な利用場面」
「use case」は、日本語では「利用ケース」「利用場面」「活用用途」などと表現できます。
たとえば、生成AIの機能として「文章生成」があるとします。
しかし、機能だけでは、誰が何のために使うのかまでは分かりません。
そこで、次のように具体化します。
- 営業担当者が提案メールの下書きを作る
- 人事担当者が求人票のたたき台を作る
- マーケティング担当者が広告文の案を複数作る
- カスタマーサポート担当者が問い合わせ回答案を作る
これらが、生成AIにおける具体的なユースケースの例です。
つまり、「何ができるか」が機能で、「誰がどんな目的で使うか」まで具体化したものがユースケースと考えると理解しやすいでしょう。

IT・システム開発ではより具体的な意味を持つ
システム開発におけるユースケースは、単なる「使い道」より具体的です。
そのため、利用者が特定の目的を達成するまでに、システムとどのようにやり取りするかを整理します。
たとえば、ネットショップで「商品を購入する」というユースケースなら、次のような流れが考えられます。
- 利用者が商品を選ぶ
- カートに入れる
- 配送先を入力する
- 支払い方法を選ぶ
- 注文を確定する
- システムが注文完了を表示する
このように整理することで、「システムにどのような機能が必要なのか」を利用者の視点から考えられます。
ユースケースの仕組み
ユースケース自体が動作する技術というわけではありません。利用者の目的と、目的を達成するまでのシステムとの関わりを整理するための考え方です。
また、実務では、次の要素を整理するとユースケースが分かりやすくなります。
| 要素 | 確認する内容 | 例 |
|---|---|---|
| 利用者 | 誰が使うのか | 営業担当者 |
| 課題 | 何に困っているのか | メール作成に時間がかかる |
| 目的 | 何を実現したいのか | 下書きを短時間で作る |
| システム | 何を利用するのか | 生成AI |
| 利用方法 | どのように使うのか | 商談内容を入力して文章案を生成 |
| 結果 | 最終的にどうなるのか | 担当者が確認したメールを送信できる |
「生成AIを使う」というだけではユースケースとしては抽象的です。
一方、「誰が・どんな課題を・どのような流れで解決するのか」まで具体化すると、実際の導入方法を検討しやすくなります。
ユースケース図とは?
利用場面を視覚的に整理する方法として「ユースケース図」があります。
ユースケース図はUML(Unified Modeling Language)で使われる図の一つです。主に「アクター」と呼ばれる利用者などと、システムが提供する機能との関係を表します。
たとえばネットショップなら、
- 顧客
- 商品を検索する
- 商品を購入する
- 注文履歴を確認する
といった関係を図で整理できます。
ユースケース図ではシステム内部の細かな処理を説明することよりも、外部の利用者から見て、そのシステムで何ができるのかを把握することが重要です。
ユースケースの具体例
この考え方はITシステムだけでなく、日常的なサービスやAI活用にも当てはめられます。
そのため、身近な例から考えると意味を理解しやすくなります。
身近なサービスの例
たとえば銀行のATMには、次のようなユースケースがあります。
- 利用者が現金を引き出す
- 利用者が口座残高を確認する
- 利用者が現金を預け入れる
- 利用者が振り込みを行う
「ATMにはタッチパネルがある」は機能や仕様の説明です。
一方、「利用者が口座から現金を引き出す」は、利用者の目的を表しているためユースケースになります。
生成AIのユースケース例
生成AIでは、業務ごとにさまざまなユースケースを考えられます。
| 業務 | ユースケース例 |
|---|---|
| 営業 | 商談内容をもとにフォローメールの下書きを作る |
| マーケティング | 商品情報から広告文の案を複数作る |
| 人事 | 募集条件から求人票のたたき台を作る |
| 会議 | 議事録から決定事項やタスクを整理する |
| カスタマーサポート | 問い合わせ内容から回答案を作る |
| 社内業務 | 社内資料をもとにFAQ回答を支援する |

ただし、生成AIを導入すれば自動的に業務が改善されるとは限りません。
「どの業務の、どの作業に使うのか」「生成結果を誰が確認するのか」「どのような情報を入力してよいのか」といった条件まで決めることが重要です。
ユースケースは何のために使う?
ユースケースを整理する主な目的は、利用者が求める結果と、それを実現する方法を具体化することです。
一方、システム開発やAI導入では、関係者によってイメージが異なることがあります。
たとえば、「生成AIで営業を効率化する」という方針だけでは、人によって想像する内容が異なります。
- メール作成を効率化する
- 商談内容を要約する
- 提案資料を作成する
- 顧客情報を分析する
ただし、どれも「営業でAIを使う」例である一方、必要なデータや業務フロー、リスクは異なります。
そこでユースケースを具体化すれば、何を実現するのかについて関係者の認識をそろえやすくなります。
ユースケースの作り方
まず、ユースケースを作るときは、いきなり製品やツールを決めるのではなく、解決したい課題から考えることが大切です。
そのため、初心者であれば、次の5段階で整理するとよいでしょう。
1. 解決したい問題を決める
最初に、「何を改善したいのか」を決めます。
たとえば、
「毎日、顧客へのメール作成に時間がかかっている」
という課題があるとします。
「生成AIを導入したい」から考え始めるのではなく、まず業務上の問題を明確にするのがポイントです。
2. 誰が利用するかを決める
次に、実際に利用する人を決めます。
たとえば、先ほどの例なら「営業担当者」です。
システム開発では、システムと関わる人や外部システムなどを「アクター」と呼ぶ場合があります。
3. 達成したい結果を決める
次に、利用者が最終的に何を実現したいのかを決めます。
メール作成の例であれば、
「商談内容に合ったメールの下書きを作成し、担当者が確認して送信できる状態にする」
と設定できます。
単に「AIを使う」ことを目的にしないことが重要です。
4. 利用の流れを整理する
続いて、目的達成までの流れを考えます。
たとえば、
- 営業担当者が商談内容を整理する
- 必要な情報を生成AIへ入力する
- 生成AIがメール案を作る
- 営業担当者が内容を確認・修正する
- 顧客へ送信する
という流れです。
このように、ここまで具体化すると、必要な機能や人が確認すべき工程も見えやすくなります。
5. 条件や例外を確認する
最後に、通常どおり進まない場合やリスクも考えます。
生成AIの場合なら、
- 機密情報や個人情報を入力してよいか
- 誤った内容が生成された場合はどうするか
- 誰が最終確認するか
- 利用できない情報は何か
- 出力品質をどのように確認するか
などです。
さらに、正常に利用できる場面だけでなく、失敗する可能性まで考えておくと、実務で使いやすいユースケースになります。

ユースケースを考えるメリット
ユースケースを整理すると、技術や製品を具体的な業務へ結びつけやすくなります。
主なメリットは次のとおりです。
- 利用目的が明確になる
- 必要な機能を整理しやすくなる
- 関係者の認識を合わせやすい
- 導入範囲を決めやすくなる
- 効果を評価しやすくなる
- リスクや例外を事前に検討しやすい
特に生成AIでは、「AIで何ができるか」だけを考えると活用範囲が広がりすぎることがあります。
そのため、具体的なユースケースへ落とし込むことで、導入目的や評価基準を明確にしやすくなります。
ユースケースを作るときの注意点
ユースケースは具体的であるほど実務に役立ちますが、細かく書けばよいわけではありません。
まず注意したいのが、目的が曖昧なままツールありきで考えないことです。
「ChatGPTを使う」「生成AIを導入する」だけでは、ユースケースとして十分に具体化されていません。
たとえば、
「営業担当者が商談メモからフォローメールの下書きを作成する」
とすれば、利用者と目的が明確になります。
また、AIのユースケースでは、期待する効果だけでなく、データの扱い、誤生成への対応、人による確認なども検討する必要があります。
「誰が何を達成するのか」と「安全に運用できるのか」の両方を見ることが重要です。
ユースケースに関するよくある質問
ユースケースと事例は同じですか?
ただし、完全に同じではありません。
「事例」は、実際に行われた取り組みを指す場合が一般的です。一方、ユースケースは、これから実現する利用方法を設計するときにも使えます。
そのため、「導入事例」は過去または現在の実例、「ユースケース」は具体的な利用場面や利用方法、と考えると区別しやすいでしょう。
ユースケースと機能の違いは何ですか?
機能は「システムが何をできるか」、ユースケースは「利用者がそのシステムを使って何を実現するか」に重点があります。
たとえば「文章を生成する」は生成AIの機能です。
一方、「営業担当者が商談内容からお礼メールの下書きを作る」はユースケースです。
AIのユースケースとは何ですか?
AIを使って解決する具体的な問題や利用場面です。
たとえば「生成AIを導入する」だけでは抽象的ですが、「問い合わせ担当者が生成AIを使って回答案を作成し、人が確認して返信する」とすれば具体的なAIユースケースになります。
ユースケース図は必ず作る必要がありますか?
必ずしも必要ではありません。
簡単な業務改善であれば、文章や表で「利用者・目的・流れ・結果」を整理するだけでも役立ちます。
一方、複数の利用者や機能が関係するシステムでは、ユースケース図を使うと全体像を共有しやすくなります。
まとめ
ユースケースとは、誰が、何の目的で、製品・システム・技術をどのように利用するのかを具体化した利用場面です。
ITやシステム開発では、利用者が目標を達成するまでのシステムとの関わりを整理するために使われます。また、AI分野では「AIを使ってどの問題を解決するのか」を具体化する考え方としても重要です。
ユースケースを考えるときは、
- 解決したい問題
- 利用する人
- 達成したい結果
- 利用の流れ
- 条件や例外
を順番に整理すると分かりやすくなります。
「AIを使う」「システムを導入する」という抽象的な話で終わらせず、具体的なユースケースへ落とし込むことで、実際の業務やサービスでどのように活用するのかを検討しやすくなるでしょう。
