リトリーバーとは?意味・仕組み・使い方を初心者向けにわかりやすく解説

リトリーバー(Retriever)とは、質問や検索条件を受け取り、情報源の中から関連する文書や情報を探して返す仕組みです。

生成AIの分野では、特にRAG(検索拡張生成)の「検索担当」として登場します。

たとえば、社内規程を使って質問に答える生成AIを考えてみましょう。「出張時の宿泊費はいくらまで?」と質問すると、リトリーバーが関連する規程を探します。その情報をLLMへ渡すことで、AIは社内資料を参考に回答できます。

ただし、リトリーバーとベクトルデータベース、Embeddingは同じものではありません。

そこで、この記事では、リトリーバーの意味や仕組み、RAGでの役割、関連用語との違い、具体的な使い方を初心者向けに解説します。

目次

リトリーバーとは?

リトリーバーとは、簡単にいえば**「質問に関係する情報を探して取り出す役割」**です。

さらに、生成AIや情報検索の文脈では、質問やクエリに応じて関連情報を取得する仕組みをRetrieverと呼びます。

Retrieverは「情報を探して取り出す役割」

たとえば、100ページある社内マニュアルから「有給休暇の申請方法」に関係する部分だけを見つけたい場面を考えます。

そのため、すべてのページを毎回AIへ渡すのではなく、質問と関係が深い部分を先に検索します。

このとき、検索条件を受け取り、関連する文書を返す役割を担うのがリトリーバーです。

初心者の場合は、

質問 → リトリーバーが資料を探す → 関連資料を取り出す

という流れを覚えると理解しやすいでしょう。

RAGで重要な検索担当

リトリーバーという言葉は、RAGを学ぶときによく登場します。

RAGは、外部情報の検索と生成AIによる回答生成を組み合わせる仕組みです。

一般的なRAGでは、まず質問に関連する情報を検索します。次に、その情報をLLMへ渡し、回答生成に利用します。

つまり、

  • Retriever:必要な情報を探す
  • LLM:取得した情報を参考に回答を作る

という役割分担です。

リトリーバーの検索結果が適切でなければ、LLMへ必要な情報を渡せません。そのため、RAGでは生成モデルだけでなく検索部分も重要になります。

リトリーバーの仕組み

リトリーバーの実装方法はシステムによって異なります。しかし、基本的な流れは「質問を受け取り、情報を検索し、関連性の高い結果を返す」です。

1. 質問・クエリを受け取る

最初に、利用者から質問が入力されます。

たとえば、

「育児休業の申請方法を教えて」

という質問です。

この質問が検索のためのクエリとしてリトリーバーへ渡されます。

2. 情報源を検索する

次に、リトリーバーが利用できる情報源から関連情報を探します。

対象になる情報には、たとえば次のようなものがあります。

  • 社内マニュアル
  • FAQ
  • 商品資料
  • 技術文書
  • ナレッジベース
  • 検索インデックス
  • データベース

一方、文章の意味的な近さにはベクトル検索を使えます。さらに、キーワード検索を利用する場合もあります。

3. 関連性の高い情報を返す

検索すると多数の候補が見つかる場合があります。

そこで、質問との関連性などをもとに、有力な文書や文章の一部を選びます。

たとえば、「育児休業の申請方法」という質問であれば、会社の育児休業規程や申請手続きを説明した部分を返します。

4. RAGではLLMが回答生成に利用する

RAGでは、取得した情報を質問とともにLLMへ渡します。

LLMは渡された情報を文脈として利用し、回答を生成します。

大まかな流れは次のとおりです。

  1. 利用者が質問する
  2. リトリーバーが関連情報を検索する
  3. 関連性の高い文書を取得する
  4. 質問と取得情報をLLMへ渡す
  5. LLMが回答を生成する
リトリーバーがRAGで関連情報を検索する仕組み

このように、リトリーバーは回答そのものを生成する仕組みではありません。回答に使う情報を探す前段の役割です。

リトリーバーとEmbedding・ベクトルストア・LLMの違い

RAGを学び始めると、リトリーバー、Embedding、ベクトルストア、LLMといった用語が一緒に登場します。

それぞれは関係していますが、役割は異なります。

用語初心者向けの意味主な役割
リトリーバー質問に関連する情報を取得する仕組み検索・取得
Embedding文章などをベクトルで表現する方法意味的な比較をしやすくする
ベクトルストアベクトルを保存・検索する仕組み保存・類似検索
LLM文章を理解・生成する大規模言語モデル回答生成など
RAG外部情報の検索と生成を組み合わせる仕組み検索結果を回答へ活用

特に注意したいのが、リトリーバー=ベクトルデータベースではないという点です。

そのため、ベクトルストアを検索対象にして、検索結果を返すリトリーバーも作れます。

一方、リトリーバーはより広い概念です。ベクトルストアだけでなく、別の検索方法や情報源を使って文書を取得する設計もできます。

リトリーバーとEmbedding・ベクトルストア・LLMの違いを示す図

リトリーバーにはどのような検索方法がある?

リトリーバーは、「どの方法で情報を探すか」まで一つに固定された言葉ではありません。

用途に合わせて検索方法を選びます。

ベクトル検索

RAGでよく利用される方法の一つがベクトル検索です。

文章をEmbeddingによってベクトルへ変換し、質問と意味的に近い文章を探します。

たとえば、

「生成AIを会社で使う方法」

という質問に対して、

「業務へのAI導入手順」

という文章を関連情報として見つけられる可能性があります。

単語が完全に一致しなくても、意味的な近さを利用して検索できる点が特徴です。

キーワード検索

キーワード検索では、検索語と文書内の文字や単語などの一致を利用します。

製品番号、型番、固有名詞など、文字列そのものが重要な検索では有効な場合があります。

ベクトル検索とは得意な検索が異なるため、目的によって使い分ける必要があります。

ハイブリッド検索

ベクトル検索とキーワード検索など、複数の検索方法を組み合わせる方法もあります。

これをハイブリッド検索と呼びます。

さらに、意味の近さと単語の一致の両方を扱いたい場合にも利用できます。

つまり、リトリーバーを理解するときは「特定の検索アルゴリズム」ではなく、必要な情報を取得するための検索担当と考えると整理しやすくなります。

リトリーバーはどのような場面で使う?

リトリーバーは、大量の情報から質問に必要な部分を絞り込む場面で利用できます。

特に生成AIと組み合わせる場合、企業独自の情報や専門資料を回答へ活用したいケースと相性があります。

社内文書を使った質問回答

代表例が、社内規程やマニュアルを参照するAIです。

社員が質問すると、リトリーバーが関連する社内文書を探します。その結果をLLMへ渡し、回答生成に利用します。

人が大量のファイルを一つずつ開いて探す代わりに、必要な情報へアクセスしやすくする用途です。

FAQ・カスタマーサポート

商品マニュアルやFAQを検索対象にする方法もあります。

顧客から質問を受けたとき、関連する説明や手順を取得し、AIによる回答支援へ利用できます。

ただし、誤った情報を案内すると影響が大きい業務では、参照元を確認できる設計や人による確認も重要です。

大量の文書から必要な情報を探す

リトリーバーはRAG専用の考え方ではありません。

多数の文書から関連情報を検索し、その後の処理へ渡す仕組みとして利用できます。

生成AIによる回答だけでなく、検索システムや情報整理などへ組み込むことも可能です。

リトリーバーを使うメリット

リトリーバーを利用するメリットは、大量の情報から必要な部分だけを取り出しやすくなることです。

主なメリットは次のとおりです。

  • 質問に関連する文書を絞り込める
  • 社内情報など外部の知識をLLMへ渡せる
  • 毎回すべての資料をLLMへ入力する必要を減らせる
  • 情報源を更新すれば、新しい内容を検索対象にできる
  • 検索結果や参照元を確認できるシステムを設計できる

特にRAGでは、モデル自体を再学習させず、外部に保存した文書を検索して回答へ利用できる点が重要です。

リトリーバーを使う際の注意点

リトリーバーを用意すれば、生成AIの回答が自動的に正しくなるわけではありません。

RAGでは「何を生成するか」だけでなく、「何を検索して渡したか」が回答品質に影響します。

元データの品質が重要

検索対象の情報が古い、間違っている、重複している場合、適切な検索結果を得にくくなります。

たとえば、古い就業規則と新しい就業規則が混在していれば、現在は使われていない内容が検索される可能性もあります。

そのため、ナレッジベース側の更新や管理も重要です。

必要な情報を検索できなければLLMへ渡せない

正しい答えが文書内に存在していても、その部分をリトリーバーが取得できなければLLMは利用できません。

RAGでは、「LLMの性能を上げればすべて解決する」とは限らない点に注意しましょう。

検索対象となる文書の分割方法、検索方式、取得件数、質問の内容なども結果に影響します。

実際の質問を使って検索結果を評価する

検索精度は、仕組みを作っただけでは判断できません。

実際に利用される質問を用意し、

  • 必要な文書が検索できるか
  • 関係のない文書が上位に出ていないか
  • 正解に必要な情報が含まれているか

などを確認します。

最初に複数の候補を取得し、その後に質問との関連性を再評価して順位を付け直す「リランキング」を利用する方法もあります。

リトリーバーの使い方・精度を高めるポイント

初心者がリトリーバーを使ったRAGを考える場合、最初から複雑な仕組みにする必要はありません。

基本的には次の順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 利用目的を決める
    何の質問に答えたいのかを明確にします。
  2. 検索対象の資料を整理する
    マニュアル、FAQ、規程など必要な情報を選びます。
  3. 検索方法を決める
    ベクトル検索、キーワード検索、ハイブリッド検索などから目的に合う方法を検討します。
  4. リトリーバーで関連情報を取得する
    質問に対して必要な文書が返るか確認します。
  5. RAGでは取得情報をLLMへ渡す
    質問と検索結果を使って回答を生成します。
  6. 実際の質問で評価する
    検索結果と回答を確認し、必要に応じて改善します。
リトリーバーの使い方と精度を高めるポイントを示す図

特に重要なのは、いきなりLLMの回答だけを見るのではなく、リトリーバーが何を取得したのかを確認することです。

回答がおかしい場合、「生成部分の問題」なのか「検索部分の問題」なのかを分けて調べると改善しやすくなります。

リトリーバーに関するよくある質問

リトリーバーとは簡単にいうと何ですか?

質問や検索条件を受け取り、関連する文書や情報を探して返す仕組みです。

RAGでは、LLMへ渡す情報を探す「検索担当」と考えると分かりやすいでしょう。

リトリーバーとRAGは同じですか?

同じではありません。

RAGは、外部情報の検索と生成AIによる回答生成を組み合わせる仕組みです。

リトリーバーは、その中で情報を検索・取得する役割を担います。

リトリーバーとベクトルデータベースは同じですか?

同じではありません。

ベクトルデータベースやベクトルストアは、ベクトルを保存・検索するための仕組みです。

リトリーバーは、質問を受け取って関連情報を返す役割です。ベクトルストアを検索先として利用するリトリーバーを作ることがあります。

リトリーバーでは必ずベクトル検索を使いますか?

必ずしもベクトル検索だけを使うわけではありません。

システムによって、キーワード検索やベクトル検索、それらを組み合わせたハイブリッド検索などを利用できます。

そのため、「リトリーバー=ベクトル検索」と覚えるのではなく、情報を検索・取得するための仕組みと理解するほうが正確です。

RAGには必ず「Retriever」という部品が必要ですか?

RAGでは何らかの形で外部情報を検索・取得する段階が必要です。

ただし、利用するフレームワークやシステムによって、必ず「Retriever」という名前の独立した部品を使うとは限りません。

重要なのは名称ではなく、質問に必要な外部情報を取得し、その結果を生成処理へ渡すことです。

リトリーバーを使えばAIの回答は正確になりますか?

正確性が保証されるわけではありません。

検索対象の情報が間違っていたり、必要な情報を検索できなかったりすれば、回答品質にも影響します。

リトリーバーの検索結果と、LLMが生成した回答の両方を評価することが大切です。

まとめ

リトリーバー(Retriever)とは、質問やクエリに応じて関連する文書や情報を検索・取得する仕組みです。

生成AIでは特にRAGの検索部分で利用されます。

初心者は、次のように覚えておくとよいでしょう。

  • リトリーバーは「検索担当」
  • RAGでは取得した情報をLLMへ渡す
  • Embeddingは意味を比較しやすいベクトル表現を作る技術
  • ベクトルストアはベクトルを保存・検索する仕組み
  • リトリーバーはベクトル検索だけに限定されない
  • 検索結果の品質がRAGの回答にも影響する

つまり、RAGの回答品質を考えるときはLLMだけを見るのではなく、「質問に対して適切な情報を取得できているか」も確認する必要があります。

リトリーバーの役割を理解すると、RAG、Embedding、ベクトル検索、ナレッジベースといった関連用語のつながりも理解しやすくなります。

関連用語

出典・参考情報

この記事を書いた人

田中和馬のアバター 田中和馬 株式会社エヌ・ケーパートナーズ/AIスクールガイド|AWL編集長

株式会社エヌ・ケーパートナーズが運営する「AIスクールガイド|AWL」編集長。10年以上にわたり、SEOメディアの立ち上げ・構築・運用に携わってきました。

2024年頃から生成AIを独学で学び始め、その後、生成AIスクールでも体系的に学習。現在はChatGPT、Gemini、Claudeなどを活用し、ディープリサーチによる情報収集、マーケティング企画、記事構成・文書作成、メール作成、業務自動化などに日常的に取り組んでいます。

また、生成AIをWebサイトの企画・制作、コーディング、デザインにも活用。エンジニアやデザイナーの業務領域を理解しながら、自らディレクションを行い、メディアの設計から制作・運用まで一貫して担当しています。生成AIスクール・講座の調査、比較基準の設計、記事編集・品質管理も担当しています。

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