Evalsとは?意味・仕組み・使い方を初心者向けにわかりやすく解説

Evals(イーバルズ)とは、AIや生成AIシステムが期待どおりに動いているかを、決めた基準に沿って評価するためのテストです。「evaluations(評価)」を短くした呼び方として使われています。

たとえば、生成AIに問い合わせメールの返信を作らせる場合、「文章が自然だった」という感覚だけで品質を判断すると、担当者によって評価が変わってしまいます。そこで、「質問へ正しく回答できているか」「禁止事項を守っているか」「指定した文体になっているか」などの基準を決め、複数の入力で繰り返し確認するのがEvalsです。

Evalsを理解すると、ChatGPTなどの生成AIを「なんとなく便利だから使う」段階から、期待する品質を確認しながら改善する段階へ進みやすくなります。

この記事では、Evalsの意味や仕組み、評価方法、初心者でも理解しやすい使い方を順番に解説します。

目次

Evalsとは?

Evalsとは、AIの出力や動作を一定の基準でテストし、期待する品質を満たしているか確認する仕組みです。

生成AIでは、同じような質問をしても毎回まったく同じ回答になるとは限りません。そのため、単に「動いた」「回答が返ってきた」だけでなく、回答の正確さや形式、安全性、使いやすさなども確認する必要があります。

Evalsでは、主に次の要素を組み合わせて評価します。

  • AIへ与えるテスト用の入力
  • 期待する回答や望ましい状態
  • 良し悪しを判断する評価基準
  • AIが実際に出した回答
  • 採点結果や失敗例

つまり、Evalsは学校のテストに近い考え方です。

問題だけを用意するのではなく、「何を正解とするか」「どの条件を満たせば合格なのか」まで決めておき、AIの結果を確認します。

Evalsで生成AIの回答品質を評価する仕組み

Evalsは単なる「点数」ではない

Evalsという言葉を見ると、「AIに100点満点で点数を付ける仕組み」と考えるかもしれません。

しかし、実際には点数そのものよりも、何を測るのかを明確にすることが重要です。

たとえば問い合わせ対応AIなら、評価したい項目として次のようなものが考えられます。

評価項目確認する内容
正確性質問に対して正しい情報を回答しているか
指示遵守指定されたルールを守っているか
関連性質問と関係のある回答になっているか
文体指定したトーンや表現になっているか
安全性出してはいけない情報を出力していないか
応答速度実用上問題のない時間で回答できるか

用途によって「良い回答」の意味は変わります。

そのため、Evalsでは一般的なAI性能だけを見るのではなく、自分がAIに任せたい仕事に合わせて評価基準を作ることが大切です。

Evalsの仕組み

Evalsの基本的な流れは、**「成功条件を決める→テストする→採点する→失敗を調べる→改善する」**というサイクルです。

1. 何を「良い結果」とするか決める

最初に、AIへ何を期待するのかを明確にします。

たとえば、「問い合わせへの返信文を作るAI」というだけでは、評価基準が曖昧です。

そこで、

「問い合わせ内容へ正確に回答し、丁寧な文体を保ち、分からないことを推測で断定しない」

といった形で成功条件を具体化します。

2. テストケースを用意する

次に、実際にAIへ与える質問やデータを用意します。

簡単なケースだけではなく、AIが間違えやすいケースも含めることが重要です。

たとえば問い合わせ対応なら、通常の質問だけでなく、情報が足りない質問や複数の条件が含まれる質問もテスト対象になります。

3. AIに回答させる

用意したテストケースをAIへ入力し、回答を生成します。

プロンプトや使用モデルを変更した場合も、同じテストを実行すれば変更前後を比較しやすくなります。

4. 決めた基準で採点する

生成された回答を評価します。

正解が一つに決まる問題なら、正解との一致をプログラムで確認できます。一方、文章の自然さや分かりやすさなどは、人や別のAIモデルを使って評価する方法もあります。

5. 失敗を分析して改善する

Evalsの目的は点数を出して終わることではありません。

どの質問で失敗したのか、なぜ失敗したのかを確認し、プロンプトやデータ、ツールの使い方などを改善します。

その後、同じEvalsをもう一度実行します。

このサイクルを繰り返すことで、変更によって品質が改善したのか、それとも別の問題が発生したのかを確認しやすくなります。

なぜ生成AIにEvalsが必要なのか

生成AIを業務やサービスで使う場合、Evalsは品質を安定させるための重要な考え方になります。

理由の一つは、生成AIの回答にはばらつきがあることです。

一般的なプログラムでは、「この入力なら必ずこの結果になる」と判断できる処理も多くあります。一方、生成AIでは自然言語を扱うため、正しい答えが一つに限定できないケースも少なくありません。

さらに、プロンプトやモデルを変更すると、一部の回答は改善しても、別の質問で品質が低下する可能性があります。

Evalsを用意しておけば、こうした変更の影響を同じ条件で比較できます。

特に、次のような場面で役立ちます。

  • プロンプトを書き換えたとき
  • 使用するAIモデルを変更するとき
  • AIエージェントへ新しいツールを追加するとき
  • RAGなどで参照データを変更するとき
  • AIサービスを公開する前
  • 公開後に新しい失敗例が見つかったとき

一度だけ評価するのではなく、変更のたびに繰り返し確認できる状態を作ることがEvalsの強みです。

Evalsにはどんな評価方法がある?

Evalsの採点方法は、大きく分けるとルールやコードによる評価、人による評価、AIによる評価があります。

Evalsのテスト・採点・改善サイクル

ルールやコードで評価する

正解が明確な場合に向いています。

たとえば、

「回答に指定の文字列が含まれているか」

「分類結果が正解ラベルと一致しているか」

「決められたJSON形式になっているか」

といった項目です。

自動化しやすく、大量のテストを繰り返し実行できる点がメリットです。一方、文章の分かりやすさや気配りのような複雑な品質は評価しにくい場合があります。

人が評価する

専門家や担当者が実際の回答を読み、基準に沿って評価する方法です。

文章の自然さや専門的な正確さなど、人の判断が重要な項目に向いています。

ただし、多数の回答を人だけで評価すると、時間とコストがかかります。また、評価者によって判断が変わらないよう、できるだけ明確な基準を用意する必要があります。

AIに評価させる

別のAIモデルへ採点基準を与え、回答を評価させる方法もあります。

「この回答が指定した条件をどの程度満たしているか」といった複雑な判断を自動化しやすいのが特徴です。

ただし、評価する側もAIである以上、その判定が常に正しいとは限りません。

そのため、AIによる採点結果が人の判断と合っているかを定期的に確認することが重要です。

Evalsの使い方を具体例で解説

初心者がEvalsを理解するには、小さなAI業務を一つ選んで考えると分かりやすくなります。

ここでは、「社内FAQへ回答する生成AI」を例にします。

Step 1:目的を一つに絞る

まず、

「社員からの有給休暇に関する質問へ、社内規定に沿って回答する」

という目的を設定します。

最初から会社中のあらゆる質問を評価しようとすると、基準が複雑になりすぎます。

Step 2:良い回答の条件を決める

たとえば次の4項目です。

  • 社内規定の内容と一致している
  • 質問されていない内容を勝手に作らない
  • 分からない場合は確認を促す
  • 読みやすい日本語で回答する

これで「良い回答」の意味が具体的になります。

Step 3:テスト用の質問を作る

通常の質問に加えて、間違いやすい質問も入れます。

テスト例確認したいこと
有給休暇は何日前までに申請しますか?基本情報を正しく回答できるか
入社直後でも有給は取れますか?条件を正しく扱えるか
規定に書かれていないケース勝手に推測しないか
複数の制度を一度に質問条件を整理して回答できるか

Step 4:現在のAIを評価する

テストを実行し、決めた基準で結果を確認します。

もし「正しい情報は回答できるが、情報がない場合にも推測してしまう」という問題が見つかったら、改善対象が明確になります。

Step 5:改善して再テストする

プロンプトへ「根拠がない情報は推測せず、確認が必要と回答する」といったルールを追加し、同じテストを再び実行します。

以前失敗した質問が改善したかだけでなく、もともと正しく回答できていた質問が悪化していないかも確認します。

EvalsでAI回答を比較する具体例

このように、Evalsを使うと「なんとなく回答が良くなった」ではなく、どこが改善し、どこに問題が残っているのかを確認しながらAIを調整できます。

Evalsとベンチマーク・モニタリングの違い

Evalsと似た言葉に「ベンチマーク」や「モニタリング」があります。

それぞれ目的が少し異なります。

用語主な目的
Evals特定のAIやAIアプリが期待する条件を満たすか評価する
ベンチマーク共通の問題や基準を使ってモデル性能を比較する
モニタリング公開後のAIシステムの品質や異常を継続的に確認する

ベンチマークで高得点のモデルだからといって、自社の仕事でも必ず最適とは限りません。

たとえば一般知識に強いモデルでも、自社の商品情報を正しく回答できるかどうかは別問題です。

そこで、実際の業務に近いEvalsを用意して確認することが重要になります。

また、Evalsは公開前だけのテストではありません。運用開始後に新しい失敗例が見つかったら、その事例をテストケースへ追加し、再発しないか継続して確認する使い方もできます。

Evalsを使うときの注意点

Evalsを作れば、自動的にAIの品質が保証されるわけではありません。

特に注意したいのは、評価基準そのものが間違っていれば、評価結果も役に立たないことです。

評価基準を曖昧にしない

「良い文章」「役立つ回答」のような基準だけでは、人によって評価が変わりやすくなります。

何を満たせば合格なのか、できるだけ具体化します。

簡単なテストだけにしない

よくある質問だけで高得点を取れても、実際の利用者が入力する複雑な質問に対応できなければ十分とはいえません。

通常例だけでなく、失敗しやすい条件や例外も含めます。

一つの点数だけで判断しない

総合点が高くても、重大な間違いが少数含まれている可能性があります。

平均点だけを見るのではなく、実際にどのような失敗が起きたかも確認することが大切です。

AIによる採点を過信しない

AIを使えば大量の回答を効率よく評価できますが、評価するAIにも誤りや判断のばらつきがあります。

特に専門性や安全性が重要な用途では、人による確認と組み合わせることが重要です。

Evalsについてよくある質問

Evalsは何の略ですか?

この名称は「evaluations(評価)」を短くした表現です。

AI分野では、モデルやAIアプリケーションの性能・品質を確認するための評価やテストを指して使われます。

Evalsはエンジニアしか使えませんか?

いいえ。

自動化されたEvalsを構築するにはプログラミングが必要になる場合がありますが、「成功条件を決める」「テストケースを作る」「回答を基準に沿って確認する」という考え方自体は非エンジニアでも利用できます。

むしろ、業務で何を正しい回答とするかを知る担当者や専門家の判断が重要になるケースもあります。

Evalsとテストは何が違いますか?

Evalsも広い意味ではテストの一種です。

ただし、生成AIでは同じ入力でも表現が変わる場合があり、唯一の正解文字列だけでは品質を評価できないことがあります。

そのため、正誤だけでなく、関連性、文体、安全性など複数の基準を使う場合があります。

OpenAI EvalsとEvalsは同じ意味ですか?

完全には同じではありません。

「evals」はAI評価全般を表す一般的な呼び方として使われています。一方、「OpenAI Evals」や「Evals platform」はOpenAIが提供してきた具体的な評価ツール・プラットフォームを指す場合があります。

2026年8月19日時点で、OpenAIはEvals platformの提供終了予定を公表しています。既存evalは2026年10月31日に読み取り専用となり、EvalsのダッシュボードとAPIは2026年11月30日に停止予定です。

これはOpenAIの特定プラットフォームに関する変更であり、AIを評価する手法としての「evals」という考え方がなくなるという意味ではありません。

まとめ

Evalsとは、AIや生成AIシステムが期待どおりに動いているかを、テストケースと評価基準を使って確認する仕組みです。

重要なのは、単にAIへ点数を付けることではありません。

「何を良い結果とするか」を決め、実際の利用場面に近い条件でテストし、失敗を見つけ、改善後にもう一度評価することが基本です。

生成AIの業務利用が広がるほど、「便利そうだから使う」だけでなく、期待する品質を満たしているか継続して確認する視点が重要になります。

まずは一つの小さな業務を対象に、成功条件と数種類のテストケースを決めるところからEvalsを試してみると理解しやすいでしょう。

関連用語

出典・参考情報

この記事を書いた人

田中和馬のアバター 田中和馬 株式会社エヌ・ケーパートナーズ/AIスクールガイド|AWL編集長

株式会社エヌ・ケーパートナーズが運営する「AIスクールガイド|AWL」編集長。10年以上にわたり、SEOメディアの立ち上げ・構築・運用に携わってきました。

2024年頃から生成AIを独学で学び始め、その後、生成AIスクールでも体系的に学習。現在はChatGPT、Gemini、Claudeなどを活用し、ディープリサーチによる情報収集、マーケティング企画、記事構成・文書作成、メール作成、業務自動化などに日常的に取り組んでいます。

また、生成AIをWebサイトの企画・制作、コーディング、デザインにも活用。エンジニアやデザイナーの業務領域を理解しながら、自らディレクションを行い、メディアの設計から制作・運用まで一貫して担当しています。生成AIスクール・講座の調査、比較基準の設計、記事編集・品質管理も担当しています。

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