オブザーバビリティとは?意味・仕組み・使い方を初心者向けにわかりやすく解説

オブザーバビリティ(Observability)とは、システムから得られるデータを手がかりに、内部で何が起きているのかを外側から理解・調査できる状態や能力のことです。

たとえば、システムに問題が発生したときは、エラーの発生確認だけでなく、場所や原因まで追えるようにします。

クラウドサービスや複雑なアプリケーションだけでなく、近年は生成AIやAIエージェントの運用でも重要性が高まっています。

そこで、この記事では意味や仕組み、モニタリングとの違い、具体的な使い方を初心者向けに解説します。

目次

オブザーバビリティとは

オブザーバビリティとは、システムが出力するさまざまな情報から、システム内部の状態や問題の原因を把握できる性質を指します。

なお、日本語では「可観測性」と訳されます。

簡単にいうと「なぜ起きたのか」を調べられる状態

オブザーバビリティを簡単に理解するなら、「システムで起きていることを後から詳しく調べられる状態」と考えるとよいでしょう。

たとえば、Webサービスの表示が急に遅くなったとします。

「応答時間が遅くなった」という事実だけを把握するのではなく、

  • どの処理に時間がかかったのか
  • 特定のサーバーだけで問題が起きていないか
  • データベースへの問い合わせが遅くなっていないか
  • 外部APIとの通信で待ち時間が増えていないか

といった原因まで追えるようにします。

このように、「何が起きているか」だけでなく「なぜ起きているか」を理解することがオブザーバビリティの大きな目的です。

なぜオブザーバビリティが必要なのか

また、現在のシステムは、1台のサーバーだけで完結するとは限りません。

たとえば、クラウドやデータベース、外部API、複数のアプリケーションが連携して動くケースがあります。

そのため、表面的なエラーだけを確認しても、原因がどこにあるのか判断できないことがあります。

オブザーバビリティを確保しておけば、複数の情報を関連付けながら問題を調査しやすくなります。

オブザーバビリティでシステム内部の状態を把握する仕組み

オブザーバビリティの仕組み

具体的には、システムが発するテレメトリーデータを収集・分析します。

たとえば、代表的な情報には次の3種類があります。

種類主に分かること
ログ何が起きたかエラー内容、処理内容
メトリクス数値としてどのような状態かCPU使用率、応答時間、エラー率
トレース処理がどのような経路を通ったかAPIからデータベースまでの処理経路

これらは、オブザーバビリティを実現する代表的な情報として使われています。

ログ

まず、ログはシステム内で発生した出来事を記録したデータです。

たとえば、

  • ユーザーがログインした
  • APIへのアクセスがあった
  • エラーが発生した
  • データベースへの接続に失敗した

といった情報を記録できます。

ログを調べれば、「いつ、どの処理で、何が起きたのか」を確認する手がかりになります。

メトリクス

次に、メトリクスはシステムの状態を数値として記録したデータです。

代表例には次のようなものがあります。

  • CPU使用率
  • メモリ使用量
  • リクエスト数
  • エラー率
  • 応答時間
  • 処理件数

時間の変化とともに数値を見ることで、「いつから負荷が増えたのか」「普段よりエラーが増えていないか」といった傾向を把握できます。

トレース

さらに、トレースは、1つの処理がシステム内をどう移動したかを追跡する情報です。

たとえば、ユーザーがWebページを開いたときに、

Webブラウザ → API → アプリケーション → データベース

という複数の処理が実行されるとします。

トレースを使うと、その一連の流れを追跡し、「どの部分で時間がかかったのか」「どこでエラーになったのか」を調査しやすくなります。

特に、多くのサービスが連携する分散システムでは重要な情報です。

ログ・メトリクス・トレースによるオブザーバビリティ

オブザーバビリティとモニタリングの違い

オブザーバビリティと似た言葉に「モニタリング」があります。

両者は密接に関係していますが、目的には違いがあります。

比較項目モニタリングオブザーバビリティ
主な目的状態や異常を監視する状態を理解し原因を調査する
主な問い何が起きた?なぜ起きた?
対象あらかじめ決めた指標が中心複数のデータを組み合わせて調査
エラー率が5%を超えたエラー率が増えた原因はどこか

たとえば、監視システムが「Webサイトの応答時間が通常より長い」と検知するのがモニタリングです。

一方、その情報にログやトレースを組み合わせ、「特定の外部APIが遅く、その影響で全体の応答時間が伸びている」と原因を調べる考え方がオブザーバビリティです。

ただし、両者は完全に別々のものではありません。

モニタリングで状態を継続的に確認し、そのデータを使ってより深く原因を分析できる状態を整えることが、オブザーバビリティにつながります。

オブザーバビリティは何に使う?

オブザーバビリティは、システムを安定して運用するためのさまざまな場面で活用できます。

障害原因を特定する

まず、代表的な用途が障害の原因調査です。

システムに問題が発生しても、ユーザーから見える現象と本当の原因が同じ場所にあるとは限りません。

ログ、メトリクス、トレースを組み合わせることで、

  • どのサービスで問題が始まったのか
  • エラー発生前に何が変化したのか
  • どの処理に影響が広がったのか

を確認しやすくなります。

その結果、原因特定や復旧を進めやすくなります。

性能低下の原因を調べる

また、システムが完全に停止していなくても、「以前より遅い」といった問題が起きることがあります。

その場合も、メトリクスで応答時間の変化を確認し、トレースで時間のかかっている処理を探し、ログで具体的な状態を確認するといった調査ができます。

そのため、障害だけでなく性能改善やボトルネックの発見にも活用できます。

AIやAIエージェントの運用状態を把握する

さらに、オブザーバビリティは、従来のアプリケーションだけでなくAIシステムでも利用されます。

たとえばAIエージェントでは、

  • どの処理を実行したか
  • どのツールを呼び出したか
  • どの処理に時間がかかったか
  • エラーがどこで発生したか
  • 入出力や処理の流れがどうなっていたか

などを追跡することで、AIの振る舞いを調べやすくなります。

生成AIは同じ種類の質問でも出力が常に完全に同一になるとは限りません。そのため、本番運用では「動いているか」だけでなく、「どのような処理を経て結果が出たのか」を追跡できることが重要になります。

オブザーバビリティとモニタリングの違い

オブザーバビリティを高めるメリット

オブザーバビリティを高める主なメリットは次のとおりです。

問題の原因を見つけやすくなる

たとえば、ログやCPU使用率などの数値だけでは、問題の全体像を把握できない場合があります。

そのため、複数種類のデータを関連付けて確認できれば、症状から原因へたどり着きやすくなります。

未知の問題にも対応しやすい

ただし、すべての障害を事前に予測することは困難です。

あらかじめ決めたアラートだけに頼ると、「想定していなかった問題」が起きたときに調査材料が足りなくなる可能性があります。

そのため、十分なテレメトリーデータを収集しておけば、発生後にさまざまな角度から調べられます。

複雑なシステムを把握しやすい

そのため、サービス数が増えるほど、問題が起きた場所と原因のある場所が離れる可能性があります。

トレースなどを利用して処理の流れを追えるようにしておくと、複数サービスにまたがる問題も分析しやすくなります。

改善につなげやすい

また、オブザーバビリティは障害対応だけを目的としたものではありません。

日常的にデータを確認すれば、

  • 処理の遅い部分
  • 利用が集中する時間帯
  • エラーが起こりやすい機能
  • リソースを多く消費している処理

なども把握できます。

こうした情報は、システムの改善やコスト最適化を考える材料になります。

オブザーバビリティを導入するときの注意点

オブザーバビリティは、データを大量に集めれば自動的に実現できるわけではありません。

データを集める目的を決める

たとえば、必要以上にログやメトリクスを集めると、データ量が増え、確認すべき情報も多くなります。

「どの問題を検知・調査したいのか」を考えたうえで、必要な情報を設計することが大切です。

データ同士を関連付ける

ログ、メトリクス、トレースが別々に保存されているだけでは、原因調査に時間がかかる場合があります。

同じリクエストや処理を追跡できるよう、各データを関連付けて確認できる設計が重要です。

個人情報や機密情報を不用意に記録しない

ログやトレースには、入力内容や処理情報が含まれることがあります。

そのため、個人情報、認証情報、社内機密などを必要以上に記録しない設計が欠かせません。

特に生成AIでは、ユーザーが入力した文章や参照データを扱うケースもあるため、記録範囲と保存方法を事前に確認する必要があります。

コストも確認する

大量のログやトレースを長期間保存すると、ストレージや分析サービスの利用料金が増える場合があります。

重要度に応じて保存期間や収集範囲を決めることも運用設計の一部です。

初心者がオブザーバビリティを始める方法

初心者の場合、最初から高度なシステムを作る必要はありません。

まずは次の流れで考えると理解しやすくなります。

  1. 何を把握したいか決める
    エラー、応答速度、利用状況など、確認したい対象を明確にします。
  2. メトリクスを確認する
    エラー率や応答時間など、システムの状態を数値で確認します。
  3. ログを記録する
    問題が起きたときに何が起きたのか調査できる情報を残します。
  4. 必要に応じてトレースを導入する
    複数のサービスをまたぐ処理を追跡できるようにします。
  5. データを関連付けて確認する
    アラート、メトリクス、ログ、トレースを組み合わせて原因を調べます。

最初の目的は、すべてのデータを集めることではありません。

問題が起きたときに「何が起きたのか」「なぜ起きたのか」を調査できる状態を作ることが重要です。

オブザーバビリティに関するよくある質問

オブザーバビリティを日本語にすると何ですか?

一般的には「可観測性」と訳されます。

システムが出力する情報を使い、内部の状態を外部からどの程度理解できるかを表す言葉です。

オブザーバビリティと監視は同じですか?

同じではありませんが、密接に関係しています。

監視は、あらかじめ決めた指標などを継続的に確認して異常を検知することが中心です。

一方、オブザーバビリティは複数の情報を使って「なぜその状態になったのか」まで調査できることを重視します。

オブザーバビリティの3本柱とは何ですか?

一般的には、ログ・メトリクス・トレースの3つが代表的な情報として挙げられます。

ただし、3種類のデータを集めるだけで十分とは限りません。重要なのは、それぞれを関連付け、システムの状態や問題の原因を理解できるようにすることです。

オブザーバビリティは生成AIにも必要ですか?

生成AIやAIエージェントを本番環境で運用する場合にも役立ちます。

処理時間、エラー、モデルやツールの呼び出し、エージェントの処理経路などを追跡できれば、問題発生時の原因調査や品質改善につなげやすくなります。

OpenTelemetryとは何ですか?

OpenTelemetryは、アプリケーションからトレース、メトリクス、ログなどのテレメトリーデータを取得・扱うためのオープンソースの仕組みです。

特定の監視サービスだけに依存せず、オブザーバビリティのためのデータを扱う共通基盤として利用されています。

まとめ

オブザーバビリティとは、ログ・メトリクス・トレースなどの情報を使い、システム内部で何が起きているのかを外側から理解・調査できる状態や能力のことです。

ポイントを整理すると次のとおりです。

  • 日本語では「可観測性」と呼ばれる
  • ログ・メトリクス・トレースが代表的な情報
  • モニタリングが「何が起きたか」を捉えるのに対し、「なぜ起きたか」まで調査することを重視する
  • 障害調査だけでなく、性能改善やAIシステムの運用にも使われる
  • 情報を大量に収集するだけでなく、必要なデータを関連付けて調査できる設計が重要

クラウドや生成AIなどシステムが複雑になるほど、表面上の異常だけを確認して原因を突き止めるのは難しくなります。

そのため、問題が起きてから情報を集めるのではなく、普段から「後から原因を調べられる状態」を整えておくことがオブザーバビリティの基本です。

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出典・参考情報

この記事を書いた人

田中和馬のアバター 田中和馬 株式会社エヌ・ケーパートナーズ/AIスクールガイド|AWL編集長

株式会社エヌ・ケーパートナーズが運営する「AIスクールガイド|AWL」編集長。10年以上にわたり、SEOメディアの立ち上げ・構築・運用に携わってきました。

2024年頃から生成AIを独学で学び始め、その後、生成AIスクールでも体系的に学習。現在はChatGPT、Gemini、Claudeなどを活用し、ディープリサーチによる情報収集、マーケティング企画、記事構成・文書作成、メール作成、業務自動化などに日常的に取り組んでいます。

また、生成AIをWebサイトの企画・制作、コーディング、デザインにも活用。エンジニアやデザイナーの業務領域を理解しながら、自らディレクションを行い、メディアの設計から制作・運用まで一貫して担当しています。生成AIスクール・講座の調査、比較基準の設計、記事編集・品質管理も担当しています。

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