ベクトルデータベースとは?意味・仕組み・使い方を初心者向けにわかりやすく解説

ベクトルデータベースとは、文章や画像などを数値で表した「ベクトル」を保存し、似ているデータを効率よく探せるようにするデータベースです。

また、生成AIについて学んでいると、「Embedding」「ベクトル検索」「RAG」と一緒にベクトルデータベースという言葉を見かけることがあります。

ただし、これらは同じものではありません。

簡単に整理すると、Embeddingはデータをベクトルで表す仕組み、ベクトル検索は近いベクトルを探す方法、ベクトルデータベースは大量のベクトルを保存・検索するための基盤です。RAGでは、その検索基盤としてベクトルデータベースが使われることがあります。

この記事では、ベクトルデータベースの意味や仕組み、使い方を初心者向けに解説します。通常のデータベースとの違いや、Embedding・RAGとの関係も整理します。

目次

ベクトルデータベースとは?

ベクトルデータベースとは、ベクトルを保存し、索引化して、似ているベクトルを検索できるデータベースです。

ここでいうベクトルとは、文章や画像などの特徴を数値の並びとして表したものです。

たとえば、文章をEmbeddingモデルで処理すると、次のような数値の並びへ変換できます。

[0.12, -0.08, 0.31, ...]

人間がこの数字を見ても、元の文章の意味を読み取ることは困難です。

一方、コンピューターは複数のベクトルを比較できます。そのため、「どの文章とどの文章が似ているか」を数値的に調べられます。

さらに、ベクトルデータベースは、このようなベクトルを大量に保存します。そして、必要なときに近いデータを探す役割を担います。

ベクトルデータベースで類似データを検索する仕組み

通常のデータベースとは何が違う?

通常のデータベースでは、名前、商品番号、日付、金額などの条件を使ってデータを検索することがあります。

たとえば、

「商品IDが1234」

「価格が5,000円以下」

といった条件です。

一方、ベクトル検索では「意味や特徴がどの程度近いか」を使って候補を探せます。

たとえば、「料金を返してもらえる条件」という質問に対して、「キャンセル時の返金規定」のような、言葉は異なっていても内容が近い文章を探す使い方です。

比較項目一般的な条件・キーワード検索ベクトル検索
主な検索方法値や文字列の一致・条件ベクトル同士の近さ
得意な検索ID、日付、価格、キーワードなど意味や特徴が近い情報
商品番号が一致する商品を探す質問と意味が近い文章を探す

ただし、「普通のデータベース」と「ベクトルデータベース」が完全に別物とは限りません。

現在は、既存のデータベース製品にベクトルを保存・検索する機能が備わる場合もあります。

そのため、「ベクトル専用のデータベース」だけでなく、ベクトル検索機能を備えたデータベースまで含めて考えると理解しやすいでしょう。

ベクトルデータベースと通常のデータベースの違いを示す図

ベクトルデータベースの仕組み

ベクトルデータベースでは、文章をそのまま比較するのではなく、数値のベクトルへ変換してから検索します。

基本的な流れは次のとおりです。

1. 検索したいデータを準備する

まず、検索対象となる文章や画像などを準備します。

RAGで社内文書を検索する場合なら、マニュアル、FAQ、社内規程などが対象になります。

長い文書は、そのまま一つのデータとして扱うのではなく、必要に応じて小さな単位へ分割します。

2. Embeddingでベクトルへ変換する

次に、Embeddingモデルを使ってデータをベクトルへ変換します。

Embeddingは、文章や画像などの特徴や関係性を、コンピューターが比較しやすい数値表現へ変える方法です。

ベクトルデータベースが文章の意味そのものを作っているわけではありません。

まずEmbeddingによってベクトルを作り、その結果を保存・検索するのがベクトルデータベースの役割です。

3. ベクトルと関連情報を保存する

作成したベクトルをデータベースへ保存します。

実際のシステムでは、ベクトルだけでなく、元の文章や文書ID、カテゴリなどの情報を一緒に管理する場合があります。

さらに、大量のベクトルを検索しやすくするためのインデックスを作成します。

4. 質問もベクトルへ変換する

利用者が質問を入力したら、その質問もEmbeddingモデルでベクトルへ変換します。

たとえば、

「出張の宿泊費はいくらまで?」

という質問を数値ベクトルへ変換します。

5. 近いベクトルを検索する

質問のベクトルと、データベースに保存されているベクトルを比較します。

そのうえで、質問と近いデータを候補として取り出します。

この「近いものを探す」処理がベクトル検索です。

ベクトルデータベースの仕組みを示す図

RAGの場合は、検索した文書をLLMなどへ渡し、その内容を参考に回答を生成します。

Embedding・ベクトル検索・RAGとの違い

ベクトルデータベースを理解するには、関連する4つの用語を分けて考えることが重要です。

用語初心者向けの意味主な役割
Embeddingデータを特徴を反映したベクトルで表現することデータを数値表現へ変える
ベクトル複数の数値を並べた表現データの特徴を数値として扱う
ベクトル検索ベクトル同士の近さから情報を探す方法類似データを取得する
ベクトルデータベースベクトルを保存・索引化・検索する仕組み大量のベクトルを管理する
RAG外部情報を検索し、生成AIの回答に利用する仕組み検索と生成を組み合わせる

たとえば、RAGを作る場合は、

文章 → Embedding → ベクトル → ベクトルデータベースへ保存 → 質問を検索 → 関連文書を取得 → LLMで回答

という構成があります。

したがって、「ベクトルデータベース=RAG」ではありません。

ベクトルデータベースは、RAGの検索部分を支える選択肢の一つです。

主な利用例|ベクトルデータベースは何に使う?

ベクトルデータベースは、「似ているものを探したい」場面で利用されます。

代表的な用途を確認しましょう。

意味の近い文章を検索する

代表例がセマンティック検索、つまり意味を考慮した検索です。

キーワードが完全に一致していなくても、Embeddingによって近い位置に表現された文章を探せます。

社内文書、FAQ、商品説明、記事などから関連情報を探す用途で利用できます。

RAGで関連文書を探す

生成AI分野でよく使われる用途がRAGです。

事前に社内文書などをベクトル化して検索できる状態にします。

利用者から質問が届いたら、質問に近い文書を検索します。その情報を生成AIへ渡せば、外部情報を参照した回答を作る仕組みを構築できます。

ただし、ベクトルデータベースを使えば回答が必ず正確になるわけではありません。

必要な文書を検索できるか、登録している資料が正しいか、その情報を生成AIが適切に使えるかといった条件も関係します。

似た商品やコンテンツを探す

ベクトルはレコメンドにも利用できます。

商品や記事などをベクトルとして表し、利用者が見ているコンテンツと似た候補を探す方法です。

「この商品に似た商品」「この記事と関連性の高い記事」といった候補を探す用途があります。

画像や音声などの類似検索に使う

ベクトルとして表現できるのは文章だけではありません。

使用するモデルによっては、画像や音声なども数値ベクトルとして表現できます。

そのため、似た画像を探す検索や、異なる種類のデータを扱う検索へ応用される場合があります。

ベクトルデータベースのメリット

ベクトルデータベースの大きな特徴は、データの「意味や特徴の近さ」を検索へ利用できることです。

単語が完全に一致しなくても検索できる

キーワード検索では、利用者が検索した言葉と文書内の表現が異なると、関連情報を見つけにくい場合があります。

ベクトル検索なら、Embeddingによって表現された意味的な関係を利用できます。

そのため、表現が違っていても関連する情報を候補にできる可能性があります。

多数のベクトルを検索できる

ベクトルデータベースは、ベクトルを保存するだけではありません。

検索用のインデックスを用意し、大量のベクトルから近い候補を探せるように設計されています。

生成AIのRAGや検索システムなど、多数の文書を対象にする場面で利用できます。

他の検索方法と組み合わせられる

意味的な近さだけでは不十分なケースもあります。

そのため、ベクトル検索とキーワード検索を組み合わせる「ハイブリッド検索」が利用されることもあります。

たとえば、意味が近い情報を探しながら、製品名や型番のような正確なキーワードも考慮できます。

ベクトルデータベースの注意点

ベクトルデータベースは便利ですが、導入するだけで検索精度が自動的に高くなるわけではありません。

検索結果が必ず正しいとは限らない

ベクトル検索は「似ているデータ」を探す方法です。

しかし、「似ている」と「質問への正しい答え」は同じではありません。

検索結果が利用者の意図とずれる場合もあります。

Embeddingや文書の分割方法に左右される

検索結果は、使用するEmbeddingモデルやデータの作り方にも影響されます。

長い文書をどの範囲で分割するのかによって、検索される情報が変わることもあります。

そのため、実際の質問を使って検索結果を評価することが重要です。

完全一致が重要な検索もある

型番、製品コード、契約番号などを探す場合は、意味的に近い情報よりも正確な文字列一致が重要です。

このような場面では、キーワード検索や条件検索を組み合わせた方が適している場合があります。

機密情報やアクセス権にも注意する

社内文書などを登録する場合は、データをどこへ保存するのか確認する必要があります。

サービスのデータ利用条件、アクセス権限、保存場所、セキュリティ要件なども確認しましょう。

ベクトル化したからといって、元データの機密性を考えなくてよいわけではありません。

初心者向け|ベクトルデータベースの使い方

一般の生成AI利用者が、ベクトルデータベースを直接操作する必要は通常ありません。

ChatGPTなどの生成AIサービスを使うだけなら、ベクトルの数値や検索インデックスを自分で管理する必要はないでしょう。

一方、独自の検索システムやRAGを構築する場合は、ベクトルデータベースを利用することがあります。

基本的には、次の流れで考えます。

  1. 何を検索したいか決める
  2. 検索対象の文書やデータを準備する
  3. Embeddingモデルでベクトルを作る
  4. ベクトルを検索できるデータベースへ保存する
  5. 質問をベクトル化して検索する
  6. 実際の質問で検索精度を評価する
  7. RAGなら検索結果をLLMへ渡す

最初から製品名を覚えるより、「ベクトルを作る」「保存する」「近いものを検索する」という3つの役割を理解する方が重要です。

専用のベクトルデータベースを使う方法もあれば、既存のデータベースが提供するベクトル検索機能を利用する方法もあります。

目的、データ量、既存システム、必要な検索方法などに応じて選択します。

FAQ:ベクトルデータベースに関するよくある質問

ベクトルデータベースとは一言でいうと何ですか?

文章や画像などを数値化したベクトルを保存し、似ているデータを検索しやすくするデータベースです。

生成AI分野では、意味検索やRAGの検索基盤として利用されることがあります。

ベクトルとベクトルデータベースは同じですか?

同じではありません。

ベクトルは数値の並びによる表現です。

一方、ベクトルデータベースは、多数のベクトルを保存・索引化し、検索するための仕組みです。

Embeddingとベクトルデータベースは同じですか?

異なります。

Embeddingは文章や画像などをベクトルとして表現する方法です。

そのEmbeddingによって作られたベクトルを保存・検索する場所として、ベクトルデータベースが利用されます。

ベクトルデータベースとRAGは同じですか?

同じではありません。

RAGは外部情報を検索し、その情報を生成AIの回答へ利用する仕組みです。

ベクトルデータベースは、その検索を実現するために利用されるデータ基盤の一つです。

ベクトルストアとベクトルデータベースは違いますか?

資料や製品によって用語の使い方が異なります。

「vector store」をベクトルの保存・検索基盤を広く表す言葉として使う場合があります。また、「vector database」「vector store」「vector index」が近い意味で説明されることもあります。

製品を比較するときは、名称だけで判断せず、保存・索引化・検索・更新など、実際に備えている機能を確認するとよいでしょう。

ベクトルデータベースを使うにはプログラミングが必要ですか?

一般の生成AIサービスを利用するだけなら、直接操作する必要はありません。

独自の検索システムやRAGを構築する場合は、API、Embedding、データ処理、データベースなどの知識が必要になることがあります。

まとめ

ベクトルデータベースとは、文章や画像などを数値で表したベクトルを保存・索引化し、似ているデータを検索できるようにするデータベースです。

初心者は、次の関係を理解しておくと整理しやすいでしょう。

データ → Embedding → ベクトル → ベクトルデータベース → ベクトル検索

さらに、検索した情報を生成AIへ渡して回答を作る仕組みがRAGです。https://school.aiworkstyle.net/

ベクトル、Embedding、ベクトル検索、ベクトルデータベース、RAGは密接に関係していますが、それぞれ役割が異なります。

まずは「ベクトルデータベースは、意味や特徴を表した大量のベクトルを保存し、似た情報を探すための基盤」と理解しておけばよいでしょう。

出典・参考情報

関連用語

この記事を書いた人

田中和馬のアバター 田中和馬 株式会社エヌ・ケーパートナーズ/AIスクールガイド|AWL編集長

株式会社エヌ・ケーパートナーズが運営する「AIスクールガイド|AWL」編集長。10年以上にわたり、SEOメディアの立ち上げ・構築・運用に携わってきました。

2024年頃から生成AIを独学で学び始め、その後、生成AIスクールでも体系的に学習。現在はChatGPT、Gemini、Claudeなどを活用し、ディープリサーチによる情報収集、マーケティング企画、記事構成・文書作成、メール作成、業務自動化などに日常的に取り組んでいます。

また、生成AIをWebサイトの企画・制作、コーディング、デザインにも活用。エンジニアやデザイナーの業務領域を理解しながら、自らディレクションを行い、メディアの設計から制作・運用まで一貫して担当しています。生成AIスクール・講座の調査、比較基準の設計、記事編集・品質管理も担当しています。

目次