セマンティック検索とは?意味・仕組み・使い方を初心者向けにわかりやすく解説

セマンティック検索は、キーワードの一致だけに頼りません。言葉の意味や文脈、検索意図も考慮して関連情報を探す技術です。

たとえば「雨の日でも子どもと遊べる場所」と検索するとします。文中に「雨の日」がなくても検索可能です。「屋内キッズスペース」のような意味の近い情報を探せる場合があります。

生成AIについて調べていると、セマンティック検索と一緒に「ベクトル検索」「Embedding」「RAG」といった言葉を目にすることがあります。しかし、それぞれは完全に同じ意味ではありません。

この記事では、セマンティック検索の意味や仕組みを解説します。キーワード検索・ベクトル検索との違いや代表的な使い方も紹介します。

目次

セマンティック検索とは?

セマンティック検索は、検索文の言葉だけを見る方法ではありません。意味や文脈も考慮して関連情報を探します。

「semantic」は「意味の」「意味論的な」といった意味を持つ言葉です。そのため、セマンティック検索は「意味を考慮する検索」と捉えると理解しやすいでしょう。

従来のキーワード検索では、単語の一致が重要です。利用者の入力と文書内の単語を照合します。

一方、セマンティック検索では表現の完全一致を必須としません。内容が意味的に近ければ検索候補にできます。

セマンティック検索で質問の意味に近い情報を探す仕組み

キーワード検索との違い

たとえば、社内規程を検索するとします。

検索する人が「休暇のルール」と入力したとします。文書には「年次有給休暇の取得規程」と書かれているケースです。

キーワード検索では、共通する単語の有無が結果を左右します。たとえば「休暇」という語が手掛かりになります。

セマンティック検索は、単語だけを手掛かりにしません。文章の意味的な近さから関連文書を探せる場合があります。

そのため、文書内の正確な言葉を知らなくても検索できます。自然な質問から必要な情報へたどり着きやすくなります。

ベクトル検索との違いは?

セマンティック検索とベクトル検索は密接に関係しています。ただし、両者は完全に同じ意味ではありません。

セマンティック検索は、意味を考慮して関連情報を探すという目的・検索体験を表す言葉です。

一方、ベクトル検索では文章や画像を数値の並びで表します。このベクトル同士の近さを比較し、類似情報を探します。

現在はEmbeddingとベクトル検索を組み合わせる方式が一般的です。セマンティック検索の代表的な実装方法です。

検索結果の取得後に言語理解モデルを使う方法もあります。意味的な関連性を評価し、順番を並べ替えます。

そのため、ベクトル検索は代表的な実装方法といえます。セマンティック検索との関係をこのように整理すると分かりやすいでしょう。

意味検索を実現する仕組み

セマンティック検索には複数の実装方法があります。

Embeddingとベクトル検索を利用する代表的な方式では、「情報を数値で表現する→検索文も数値化する→意味の近さを比較する→関連する結果を返す」という流れで処理します。

セマンティック検索とキーワード検索の違い

1. 検索対象の意味を数値で表現する

最初に、検索対象となる文章などをEmbeddingによってベクトルへ変換します。

Embeddingとは、文章や画像などの意味や特徴を、コンピューターが比較しやすい数値の並びとして表現する方法です。

意味や特徴が近いデータは、ベクトル空間でも近い位置に配置されやすくなります。

2. 検索文の意味を捉える

利用者が質問やキーワードを入力すると、その検索文も同じようにベクトルへ変換できます。

たとえば、「在宅勤務するときの決まりを知りたい」という質問を、検索システムが意味を比較できる数値表現へ変換します。

この処理によって、検索文と文書に同じ単語が含まれていなくても比較しやすくなります。

3. 意味の近い情報を探す

続いて、検索文のベクトルと保存されている文書のベクトルを比較します。

ベクトル空間で近い文書ほど、検索文と意味的に関連している候補として扱えます。

その結果、「在宅勤務」という言葉で検索した場合でも、「リモートワーク規程」のような異なる表現の文書を見つけられる可能性があります。

4. 必要に応じて検索結果を並べ替える

検索システムによっては、候補となった文書をそのまま返すだけではありません。

より高度なモデルを使い、検索文との関連性をもう一度評価して検索順位を調整することがあります。この処理は「リランキング」と呼ばれます。

たとえばAzure AI Searchのsemantic rankerでは、最初に取得した検索結果を言語理解モデルで評価し、意味的に関連性の高い結果を上位へ並べ替える仕組みが採用されています。

セマンティック検索と関連する検索方法の違い

セマンティック検索を理解するときは、キーワード検索、ベクトル検索、ハイブリッド検索との違いを整理するとわかりやすくなります。

検索方法主に見るもの得意な検索
キーワード検索単語や文字列商品番号、固有名詞、正確な用語
セマンティック検索意味・文脈・関連性自然な質問、言い換え、意味の近い文章
ベクトル検索ベクトル同士の近さ意味や特徴が似ているデータ
ハイブリッド検索キーワード+意味完全一致と意味検索の両方が必要な場面

ここで重要なのは、一つの方法だけが常に優れているわけではないことです。

たとえば「AB-1234」という商品番号を探す場合、意味を理解するより、その文字列へ正確に一致する情報を探すほうが適しています。

反対に、「長時間座っても疲れにくい椅子」のような自然な条件で商品を探す場合は、意味を考慮した検索が役立つ可能性があります。

そこで、キーワード検索とセマンティック検索を組み合わせる「ハイブリッド検索」も利用されています。

RAGでセマンティック検索を利用する流れ

セマンティック検索はどこで使われている?

セマンティック検索は、Web検索だけに使われる技術ではありません。

情報量が増え、利用者が正確なキーワードを知らない状況でも必要な情報を探したい場面で活用できます。

Web検索

Web検索では、利用者が必ずしもWebページと同じ言葉を入力するとは限りません。

そのため、検索文の意味や意図を理解する技術が利用されています。

Googleも、BERTなどのAIシステムを利用し、単語の組み合わせがどのような意味や意図を表しているか理解する仕組みを検索ランキングに使用しています。

ただし、Google検索全体を単純に「一つのセマンティック検索システム」と考える必要はありません。複数のランキングシステムやシグナルが組み合わされています。

社内検索・ナレッジ検索

社内には、マニュアル、規程、議事録、FAQなど大量の文書があります。

しかし、文書を書いた人と検索する人では、使う言葉が違うことがあります。

セマンティック検索を利用すると、利用者が文書内の正確な表現を知らなくても、自然な質問から関連情報を探しやすくなります。

RAG

セマンティック検索は、RAGで関連資料を取得する方法として利用されることもあります。

RAGは、生成AIが回答する前に外部の情報を検索し、その内容を参考に回答を生成する仕組みです。

たとえば社内FAQを使った生成AIでは、質問と意味の近い文書を検索し、取得した情報を大規模言語モデルへ渡す設計が考えられます。

ただし、RAGで必ずセマンティック検索を使わなければならないわけではありません。キーワード検索やハイブリッド検索などを組み合わせることもできます。

ECサイトやコンテンツ検索

商品やコンテンツを探す場面でも活用できます。

たとえば「初心者でも持ち運びやすいカメラ」のように、商品名ではなく希望条件を自然な文章で入力して探す方法です。

単語の一致だけでは見つけにくい商品でも、説明文や特徴との意味的な関連性を使って候補を探せます。

セマンティック検索のメリット

セマンティック検索の大きなメリットは、利用者が検索対象とまったく同じ言葉を知らなくても情報を探しやすいことです。

主なメリットとして、次のような点があります。

  • 自然な文章で検索しやすい
  • 言い換え表現にも対応しやすい
  • 文書内の正確な用語を知らなくても探しやすい
  • 大量の社内文書から関連情報を探す用途に利用できる
  • RAGで関連文書を取得する方法として活用できる
  • 文章以外のデータにも応用できる場合がある

特に、検索する人と情報を作った人で使う言葉が異なる場合に役立ちます。

ただし、意味検索を導入すれば、自動的にすべての検索結果が正しくなるわけではありません。

セマンティック検索の注意点

セマンティック検索にも苦手な情報があります。

そのため、導入するときはキーワード検索との使い分けや、実際の検索結果の評価が重要です。

商品番号や固有のコードを探すのは苦手な場合がある

「XJ-2048」のような商品番号や社内独自コードでは、文字列そのものが重要です。

Embeddingモデルが意味を十分に捉えられない未知の製品名、SKU、社内コードなどでは、セマンティック検索がうまく機能しない場合があります。

このような情報にはキーワード検索が適していることがあります。

意味が近いだけで正解とは限らない

ベクトル空間で意味的に近い情報が見つかったとしても、その文書が利用者の質問に対する正しい答えとは限りません。

似ている内容と、質問に必要な内容は同じではないからです。

そのため、実際の検索システムでは検索結果を評価し、必要に応じてランキング方法やデータを改善します。

元データの品質にも左右される

検索対象の情報が古かったり、誤っていたりすれば、高性能な検索技術を利用しても適切な情報を返せません。

特に社内検索やRAGでは、文書の更新、アクセス権限、重複データなども含めて管理する必要があります。

キーワード検索と組み合わせたほうがよい場合がある

セマンティック検索だけですべての検索要求を処理する必要はありません。

意味検索が得意な質問もあれば、完全一致が重要な検索もあります。

そのため、実際の用途ではキーワード検索とセマンティック検索を組み合わせたハイブリッド検索も選択肢になります。

初心者向け|セマンティック検索の使い方

セマンティック検索の「使い方」は、既存の検索サービスを利用する立場と、自社サービスなどへ導入する立場で異なります。

一般の利用者であれば、仕組みを自分で構築する必要はありません。

検索サービスを利用する場合

セマンティック検索に対応したサービスでは、単語を並べるだけでなく、知りたいことを自然な文章で入力する方法があります。

たとえば、

  • 「在宅勤務するときに必要な申請を知りたい」
  • 「初心者向けで持ち運びやすいパソコンを探したい」
  • 「契約を途中で終了するときの手続きを知りたい」

といった形です。

目的や条件を含めると、単語だけでは伝えにくい検索意図を表現できます。

ただし、製品番号や正式名称などを知っている場合は、その言葉をそのまま入力したほうが探しやすいこともあります。

検索システムを導入する場合

自社でセマンティック検索を構築する場合は、代表的には次のような流れで検討します。

  1. 何を検索したいのか決める
  2. 検索対象となる文書やデータを整理する
  3. Embeddingモデルなどを選ぶ
  4. データをベクトル化して保存する
  5. 検索文も同じ方式でベクトル化する
  6. 意味の近いデータを検索する
  7. 必要に応じてキーワード検索やリランキングを組み合わせる
  8. 実際の質問を使って検索品質を評価する

初心者は、最初から独自の検索エンジンをすべて開発する必要はありません。

クラウドサービスや検索プラットフォームには、Embedding生成やベクトル検索、セマンティックランキングなどを利用できる機能があります。

重要なのは「セマンティック検索を導入すること」自体を目的にせず、どのような質問に対して、どの情報を正しく見つけたいのかを先に決めることです。

よくある質問|セマンティック検索を初心者向けに解説

セマンティック検索とは簡単にいうと何ですか?

簡単にいうと、入力した単語の一致だけでなく、言葉の意味や文脈を考慮して関連情報を探す検索方法です。

異なる言葉で表現されていても、内容が意味的に近ければ検索結果として見つけられる場合があります。

セマンティック検索とキーワード検索の違いは何ですか?

キーワード検索は、入力された単語と文書に含まれる単語の一致を主な手掛かりとして検索します。

一方、セマンティック検索では意味や文脈も利用します。

そのため、商品番号や固有名詞など完全一致が重要な検索ではキーワード検索、自然な質問や言い換えを扱いたい場面ではセマンティック検索が役立つ場合があります。

セマンティック検索とベクトル検索は同じですか?

完全に同じではありません。

セマンティック検索は意味を考慮して情報を探す目的や検索方法を指し、ベクトル検索はデータをベクトルとして比較する検索技術です。

Embeddingとベクトル検索は、セマンティック検索を実現する代表的な方法として利用されています。

生成AIとの違いは?

セマンティック検索自体を生成AIと同じものとして扱うのは適切ではありません。

セマンティック検索は情報を探すための検索技術です。一方、生成AIは文章・画像・音声などのコンテンツを生成するAI技術を指します。

ただし、RAGではセマンティック検索などで資料を取得し、その情報を生成AIへ渡す構成があります。

Google検索もセマンティック検索ですか?

Google検索では、検索文の意味や意図を理解するためにBERTなどのAIシステムが利用されています。

また、Google Cloudの公式資料では、Google検索について意味検索とキーワード検索を組み合わせた代表的なハイブリッド検索システムとして説明されています。

ただし、Google検索は多数のシステムやシグナルによって構成されているため、「Google検索=セマンティック検索だけで動いている」と考えるのは正確ではありません。

セマンティック検索ならキーワード検索は不要ですか?

不要になるとは限りません。

商品番号、型番、固有名詞、新しく登場した名称など、文字列そのものが重要な検索ではキーワード検索が有効です。

そのため、意味検索とキーワード検索の長所を組み合わせるハイブリッド検索も利用されています。

まとめ|セマンティック検索は言葉の一致だけでなく意味を考慮する検索

セマンティック検索とは、入力されたキーワードの完全一致だけではなく、言葉の意味や文脈、検索意図を考慮して関連情報を探す検索方法です。

現在は、文章などをEmbeddingでベクトル化し、ベクトル同士の意味的な近さを比較する方法が代表的です。また、取得した検索結果を言語理解モデルで再評価する方法もあります。

初心者がまず押さえておきたいポイントは次のとおりです。

  • セマンティック検索は「意味を考慮する検索」
  • キーワードが完全一致しなくても関連情報を探せる場合がある
  • Embeddingとベクトル検索は代表的な実現方法
  • セマンティック検索とベクトル検索は完全な同義語ではない
  • RAGの情報検索にも利用される
  • 商品番号や固有コードなどはキーワード検索のほうが適する場合がある
  • キーワード検索と組み合わせたハイブリッド検索もある

「キーワードが同じか」だけを見るのではなく、「この質問とこの情報は意味的にどれくらい近いか」を考える検索と捉えると理解しやすいでしょう。

関連用語

出典・参考情報

この記事を書いた人

田中和馬のアバター 田中和馬 株式会社エヌ・ケーパートナーズ/AIスクールガイド|AWL編集長

株式会社エヌ・ケーパートナーズが運営する「AIスクールガイド|AWL」編集長。10年以上にわたり、SEOメディアの立ち上げ・構築・運用に携わってきました。

2024年頃から生成AIを独学で学び始め、その後、生成AIスクールでも体系的に学習。現在はChatGPT、Gemini、Claudeなどを活用し、ディープリサーチによる情報収集、マーケティング企画、記事構成・文書作成、メール作成、業務自動化などに日常的に取り組んでいます。

また、生成AIをWebサイトの企画・制作、コーディング、デザインにも活用。エンジニアやデザイナーの業務領域を理解しながら、自らディレクションを行い、メディアの設計から制作・運用まで一貫して担当しています。生成AIスクール・講座の調査、比較基準の設計、記事編集・品質管理も担当しています。

目次