学習データと権利とは?意味・仕組み・使い方を初心者向けにわかりやすく解説

学習データと権利とは、AIの学習に使う文章・画像・音声・個人情報などについて、誰がどのような条件で収集・利用できるのかを考えるときに関係する権利やルールの総称です。

生成AIについて調べていると、「インターネット上のデータをAI学習に使ってよいの?」「著作権者の許可は必要?」「個人情報をAIへ入力しても大丈夫?」と疑問に感じることがあります。

結論からいうと、日本ではAI学習だからすべて自由に使えるわけでも、著作物を学習させる行為がすべて禁止されているわけでもありません

著作権だけでなく、個人情報、プライバシー、契約・利用規約などを確認し、さらにAIを開発・学習させる段階と、AIが生成したものを利用する段階を分けて考えることが重要です。文化庁もAIと著作権について、開発・学習段階と生成・利用段階を分けて整理しています。

この記事では、学習データの権利問題について、生成AIを学び始めた人にも分かるように解説します。

目次

学習データと権利とは

学習データと権利とは、AIの学習に使われるデータについて、著作権や個人情報などの権利・利用条件を確認する考え方です。

そもそも学習データとは、AIモデルがパターンや特徴を学ぶために利用するデータを指します。

文章だけでなく、画像、音声、動画、プログラムなど、AIによってさまざまな種類のデータが使われます。

一方、「学習データと権利」という一つの権利が法律で定められているわけではありません。データの内容や利用方法によって、確認すべき法律や条件が変わります。

代表的なものは次のとおりです。

データの例主に確認すること
記事・小説・画像・音楽など著作権
氏名・連絡先など個人を識別できる情報個人情報
人物の私生活に関する情報などプライバシー
社内文書・顧客資料など契約・秘密保持・社内ルール
購入・契約したデータセットライセンス・利用条件
Webサービス上のデータ利用規約・契約条件など

つまり、「AIに使うデータだから」という理由だけで判断するのではなく、何のデータを、どこから取得し、何の目的で、どのように利用するのかを見る必要があります。

学習データと権利で確認すべき項目

学習データと権利では何を確認する?

学習データを利用するときは、少なくとも著作権・個人情報・契約や利用条件の3つを意識すると整理しやすくなります。

それぞれ対象が異なるため、一つを確認しただけで十分とは限りません。

著作権

著作権は、文章・画像・音楽などの著作物に関係する権利です。

ただし、データに含まれるものがすべて著作物になるわけではありません。文化庁の整理でも、単なる事実・データやありふれた表現、アイデアなどは著作権で保護される「著作物」とは区別されています。

そのため、まずは対象となるデータが著作権の保護対象になるのかを考える必要があります。

個人情報

氏名、住所、連絡先など、特定の個人を識別できる情報が含まれている場合は、著作権とは別に個人情報の扱いを確認します。

たとえば、企業が保有する顧客情報を外部の生成AIサービスへ入力し、そのサービス提供者が入力内容をAIの学習などに利用する場合、個人情報保護法上の第三者提供に該当する可能性があります。

個人情報保護委員会も、生成AIサービスへ個人データを入力する場合には、サービス提供者がその情報を機械学習に利用するかなど、利用規約やプライバシーポリシーを確認するよう注意喚起しています。

契約・利用条件

法律上利用できる可能性があっても、契約やサービスの利用規約によって利用方法が定められている場合があります。

購入したデータセット、API、会員制サービス、社内資料などをAI学習に使うときは、次のような点も確認します。

  • AI学習への利用が認められているか
  • 商用利用が認められているか
  • データの再配布が認められているか
  • 第三者サービスへの送信が認められているか
  • 利用目的に制限がないか
  • 秘密保持義務に反しないか

著作権法上の判断と、契約上利用できるかどうかは別の問題として確認することが大切です。

学習データと権利:AI学習で著作権はどう考える?

日本では、AI学習を含む「情報解析」について、一定の条件を満たせば著作権者の許諾なしで著作物を利用できる場合があります。

その中心となる規定の一つが、著作権法30条の4です。もっとも、これは「AI学習なら何でも自由」という意味ではありません。

学習データと権利:著作権法30条の4とAI学習

著作権法30条の4は、著作物に表現された思想や感情を自分や他人が「享受すること」を目的としない利用について、一定の場合に著作権者の許諾なしで利用できる規定です。

文化庁は、AI学習のための情報解析について、原則として「非享受目的」の利用に当たり得ると整理しています。

初心者向けに簡単にいうと、小説を「読むため」にコピーする場合と、コンピューターが大量の文章から言葉の傾向を解析するために処理する場合では、利用目的が異なるという考え方です。

ただし、30条の4には条件があります。

「AI学習なら自由」とは限らない

AI学習という名前が付いていれば、自動的に30条の4が適用されるわけではありません。

文化庁の整理では、著作物の表現そのものを享受する目的が併存している場合や、著作権者の利益を不当に害する場合などは、30条の4で許される範囲から外れる可能性があります。さらに、特定作品の創作的表現を出力させることを目的とした学習などについても、具体的な目的や利用態様を踏まえた判断が必要とされています。

したがって、

「AI学習だから著作権者の許可は絶対に不要」

と一律に理解するのは適切ではありません。

インターネットで公開されていれば自由に使えるわけではない

Webサイトで誰でも閲覧できる文章や画像でも、それだけで著作権がなくなるわけではありません。

また、サービスの利用規約やデータ取得方法など、著作権以外の条件が問題になる場合もあります。

そのため、学習データを収集するときは、

  • 公開されているか
  • 著作物に当たるか
  • どのような目的で利用するか
  • 法律上の権利制限規定が適用されるか
  • 契約・利用規約に問題がないか

を分けて確認する必要があります。

学習データと権利:学習段階と生成・利用段階

AIと著作権を理解するときに特に重要なのが、「AIを学習させる行為」と「AIが生成したものを利用する行為」は別に判断するという点です。

学習段階で著作物を利用できたとしても、その後に生成された文章や画像まで自動的に問題がなくなるわけではありません。文化庁も両段階を分けて整理しています。

AIの学習段階と生成・利用段階の違い

AI開発・学習段階

開発・学習段階では、データの収集、加工、事前学習、追加学習などが行われます。

この段階では、前述した著作権法30条の4をはじめとする権利制限規定が適用されるか、利用目的やデータの取得方法などを確認します。

また、著作権だけでなく、個人情報や契約上の条件も別途確認が必要です。

生成・利用段階

生成・利用段階では、AIが出力した文章・画像などが既存の著作物の権利を侵害していないかが問題になります。

文化庁の整理では、AI生成物についても、人が創作した場合と同様に、既存の著作物との類似性依拠性などを踏まえて著作権侵害の有無を判断するとされています。

たとえば、生成画像が既存作品の特徴的な創作表現と非常によく似ており、その作品に依拠して生成されたと認められる場合には、著作権侵害が問題になる可能性があります。

したがって、

学習時の利用が認められるか

生成されたコンテンツを公開・販売してよいか

は、別々に確認する必要があります。

学習データと権利で著作権以外に確認すること

学習データの権利問題は、著作権だけを確認すれば終わるわけではありません。

特に仕事でAIを利用するときは、個人情報、プライバシー、秘密情報、契約条件なども重要です。

個人情報

学習データやAIサービスへの入力に個人情報を使うときは、個人情報保護法上の取り扱いを確認します。個人情報を学習データやAIサービスへの入力データとして利用するときは、個人情報保護法上の取り扱いを確認します。

現行ガイドラインでは、個人情報取扱事業者による個人データの第三者提供について、例外を除き原則として本人の事前同意が必要とされています。個人情報保護委員会の現行ガイドラインでは、個人情報取扱事業者による個人データの第三者提供は、例外に該当する場合を除き、原則として本人の事前同意が必要とされています。

また、生成AIサービスへ個人データを入力するときは、入力内容がサービス提供者の学習に使われるのか、保存されるのか、第三者へ提供されるのかなどを確認する必要があります。

なお、個人情報を含む学習データから作られたモデルのパラメータについては、個人との対応関係が排斥され、特定個人を識別できない状態であれば、それ自体は個人情報に該当しないという個人情報保護委員会のFAQもあります。

ただし、これは「個人情報なら自由に学習させてよい」という意味ではありません。入力や提供の段階で適切な取り扱いが求められることとは別の問題です。

プライバシー・機密情報

個人情報保護法上の「個人情報」に当たるかどうかだけでなく、プライバシーへの配慮も必要です。

さらに、会社の未公開情報、顧客資料、契約書、開発中の資料などは、著作権の問題がなくても、秘密保持契約や社内規程に反する可能性があります。

仕事で生成AIを利用するときは、「個人情報ではないから入力してよい」と判断せず、社内のAI利用ルールや情報管理ルールも確認しましょう。

学習データと権利:契約・利用規約・ライセンス

学習用データセットやAPI、Webサービスなどには、それぞれ利用条件があります。

たとえば、

  • 研究目的だけ利用可能
  • 商用利用は禁止
  • AI学習への利用は禁止
  • 再配布は禁止
  • 表示・クレジットが必要

といった条件が設定される場合があります。

そのため、AI学習へ使う前に、利用規約・ライセンス・契約内容を確認することが重要です。

学習データと権利を扱う5つの確認手順

初心者が学習データを扱うときは、次の5つの順番で確認すると整理しやすくなります。

学習データの権利を安全に確認する手順

1.利用目的を決める

最初に、「何のためにデータを使うのか」を明確にします。

たとえば、

  • AIモデルを新たに学習させる
  • 既存モデルを追加学習する
  • 検索用データベースを作る
  • 生成AIへ一時的に入力する
  • AI生成物を商用利用する

では、必要な確認事項が異なります。

2.データの出所を確認する

次に、どこから取得したデータなのかを確認します。

  • 自社で作成した
  • 顧客から受け取った
  • Webから取得した
  • 有料データセットを購入した
  • オープンデータを利用した
  • 外部サービスから取得した

といった取得経路を記録しておくと、後から権利関係を確認しやすくなります。

3.著作権・ライセンスを確認する

著作物が含まれる場合は、著作権や利用許諾を確認します。

「ネットで見つけたから」「無料で閲覧できるから」という理由だけで、自由に利用できるとは限りません。

法令上の権利制限規定を利用する場合も、その要件に該当するかを確認します。

4.個人情報・秘密情報を確認する

氏名や連絡先などの個人情報、社外秘資料、顧客情報などが含まれていないかも確認します。

外部AIサービスを利用する場合は、そのサービスが入力データを保存・学習へ利用するかどうかも確認しましょう。

5.判断した内容を記録する

最後に、データの出所や利用条件、確認した規約などを記録します。

AIモデルを継続的に運用すると、後から「このデータはどこから取得したのか」「どの条件で利用していたのか」を確認する必要が生じることがあります。

そのため、権利確認を一度きりの作業にせず、データ管理の一部として扱うことが重要です。

学習データと権利でよくある誤解

学習データと権利については、次のような誤解に注意が必要です。

よくある理解実際の考え方
ネット上のデータなら自由に使える公開されていることと自由利用できることは別
AI学習なら必ず許諾が不要利用目的や30条の4の要件などを確認する必要がある
学習時に適法なら生成物も必ず安全生成・利用段階では別途著作権侵害を判断する
著作権だけ確認すればよい個人情報、契約、利用規約なども関係する
個人情報でなければ外部AIへ入力できる秘密保持義務や社内ルールなども確認が必要

特に重要なのは、一つの法律だけでAI学習の可否を判断しないことです。

学習データと権利に関するFAQ

AI学習に著作物を使うと違法ですか?

著作物をAI学習に利用しただけで直ちに違法になるとは限りません。

日本では、著作権法30条の4などにより、AI学習を含む情報解析について一定の条件で著作権者の許諾なしに利用できる場合があります。

ただし、非享受目的であることなどの要件があり、著作権者の利益を不当に害する場合なども考慮する必要があります。個別の利用方法によって判断が異なるため、「AI学習なら必ず大丈夫」とは考えないことが重要です。

Web上の画像を集めてAI学習に使ってもよいですか?

Web上で公開されていることだけでは判断できません。

著作権法上利用できるかに加えて、利用目的、取得方法、サイトの利用規約、ライセンスなどを確認する必要があります。

社内文書や顧客データを生成AIへ入力してもよいですか?

会社のルールや利用しているAIサービスのデータ取り扱いを確認せずに入力するのは避けるべきです。

個人データを外部事業者へ提供する場合には個人情報保護法上の問題が生じる可能性があり、個人情報でなくても、秘密保持契約や社内規程の対象になる場合があります。

AIが既存作品と似たものを生成したら著作権侵害になりますか?

似ているだけで直ちに著作権侵害になるとは限りません。

文化庁の整理では、既存著作物との類似性と依拠性などを踏まえて判断します。具体的な生成物や利用方法によって判断が異なります。

AIに個人情報を学習させるのは禁止されていますか?

一律に禁止されているわけではありませんが、個人情報保護法などに従った適切な取り扱いが必要です。

特に外部の生成AIサービスへ個人データを入力するときは、サービス提供者がデータを学習へ利用するか、第三者提供に該当しないかなどを確認する必要があります。

学習データと権利のまとめ

学習データと権利とは、AI学習に使うデータについて、著作権・個人情報・契約や利用条件などを確認する考え方です。

日本ではAI学習が一律に禁止されているわけではありません。一方で、「AI学習だから何でも自由に使える」と考えるのも適切ではありません。

特に次の5点を意識しましょう。

  • データを何の目的で利用するのか
  • データをどこから取得したのか
  • 著作権やライセンスに問題がないか
  • 個人情報や秘密情報が含まれていないか
  • 学習段階と生成・利用段階を分けて確認したか

生成AIを安全に活用するには、技術の仕組みだけでなく、データの出所と権利関係を確認する習慣を持つことが大切です。

学習データと権利の関連用語

関連用語

出典・参考情報

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法的判断を提供するものではありません。具体的な権利関係について判断が必要な場合は、弁護士などの専門家へ確認してください。

この記事を書いた人

田中和馬のアバター 田中和馬 株式会社エヌ・ケーパートナーズ/AIスクールガイド|AWL編集長

株式会社エヌ・ケーパートナーズが運営する「AIスクールガイド|AWL」編集長。10年以上にわたり、SEOメディアの立ち上げ・構築・運用に携わってきました。

2024年頃から生成AIを独学で学び始め、その後、生成AIスクールでも体系的に学習。現在はChatGPT、Gemini、Claudeなどを活用し、ディープリサーチによる情報収集、マーケティング企画、記事構成・文書作成、メール作成、業務自動化などに日常的に取り組んでいます。

また、生成AIをWebサイトの企画・制作、コーディング、デザインにも活用。エンジニアやデザイナーの業務領域を理解しながら、自らディレクションを行い、メディアの設計から制作・運用まで一貫して担当しています。生成AIスクール・講座の調査、比較基準の設計、記事編集・品質管理も担当しています。

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