ハイブリッド検索とは?意味・仕組み・使い方を初心者向けにわかりやすく解説

ハイブリッド検索とは、キーワードによる検索と、文章などの意味の近さを利用するベクトル検索を組み合わせる検索方法です。

キーワード検索は、固有名詞や型番など特定の言葉を探すことが得意です。一方、ベクトル検索は同じ単語がなくても候補を探せます。意味が近い情報を見つけられるためです。ハイブリッド検索は、それぞれの長所を組み合わせて検索結果を出します。

生成AIの分野では、RAG(検索拡張生成)でも利用されます。必要な情報を探す方法の一つです。

この記事では、ハイブリッド検索の意味や仕組みを解説します。ほかの検索との違いやメリット、注意点も説明します。基本的な使い方まで、初心者向けに紹介します。

目次

ハイブリッド検索とは

ハイブリッド検索は、一つの検索方式だけに頼らず、性質の異なる複数の検索方法を組み合わせる考え方です。

生成AIやRAGでは、両方を組み合わせる方式が代表的です。Microsoft Azure AI SearchやWeaviateでも、この組み合わせをハイブリッド検索と呼びます。

キーワード検索とベクトル検索を組み合わせる検索方法

たとえば、社内文書から「生成AIの利用ルール」を探す場面を考えてみましょう。

キーワード検索は「生成AI」「利用ルール」などの言葉を探します。その言葉を含む文書を見つけやすい方法です。

一方、ベクトル検索は意味の近い文書を探せます。たとえば「社内でAIを安全に使うための規程」という質問から、「生成AI利用ガイドライン」を探す使い方です。文章を数値の並びであるベクトルとして表現し、近さを利用します。

ハイブリッド検索では、2種類の検索結果を組み合わせます。そのうえで、最終的な検索順位を決めます。

ハイブリッド検索とは:キーワード検索とベクトル検索の組み合わせ

ハイブリッド検索が注目される理由

キーワード検索とベクトル検索には、それぞれ得意な検索があります。

「AB-1234」のような製品番号や人名を探す場合、言葉の一致を重視する検索が有効です。一方、曖昧な自然文には意味の近さを利用する検索が役立ちます。Microsoftも、製品コードや固有名詞ではキーワード検索が強いと説明しています。ベクトル検索は、概念的に近い情報を探せる方法です。

両方を組み合わせれば、「文字として一致する情報」と「意味として関連する情報」の双方を検索対象にできます。

ハイブリッド検索の仕組み

ハイブリッド検索では、一般的にキーワード検索とベクトル検索を実行し、それぞれから得られた候補を統合して最終順位を決めます

ただし、検索結果の統合方法はサービスやシステムによって異なります。

1. キーワード検索で文字や単語の一致を探す

まず、入力された検索語を使ってキーワード検索を行います。

キーワード検索は、文書内の単語や重要度を使って関連性を評価します。検索エンジンでは、BM25などのランキング手法も使われます。

特定の商品名、型番、専門用語など、表記そのものが重要な検索に向いています。

2. ベクトル検索で意味の近い情報を探す

同時に、質問や文書をEmbeddingでベクトルへ変換します。そのベクトルから、意味的に近い情報を検索します。

たとえば「料金を安くする方法」と質問します。すると「コスト削減の方法」と書かれた文書が見つかる可能性があります。

言葉が完全には一致していなくても、意味の近さから候補を探せる点が特徴です。

3. 2つの検索結果を統合して順位を決める

最後に、それぞれの検索結果を組み合わせます。

単純に検索スコアを足せばよいとは限りません。キーワード検索とベクトル検索では、スコアの意味や尺度が異なる場合があるためです。

そこで、順位や正規化したスコアなどを利用して検索結果を融合します。

Azure AI Searchでは、2種類の検索を並行して実行します。結果の統合にはRRF(Reciprocal Rank Fusion:逆順位融合)を使います。Weaviateでは、検索結果の融合方法を選べます。各検索方式の重みも設定可能です。

つまり、「キーワード検索+ベクトル検索=必ず決まった1種類の計算方法」というわけではありません。

ハイブリッド検索の仕組みと検索結果の統合

ハイブリッド検索とほかの検索方法の違い

ハイブリッド検索を理解するときは、キーワード検索とベクトル検索のどちらか一方を置き換える技術ではなく、両方を組み合わせる方法と考えると分かりやすくなります。

検索方法主な特徴得意な検索注意点
キーワード検索単語や文字の一致を重視固有名詞、型番、専門用語表現が異なる情報を拾いにくい場合がある
ベクトル検索意味や概念の近さを重視自然文、言い換え、類似内容固有名詞などの厳密な一致が弱い場合がある
ハイブリッド検索複数の検索結果を統合厳密な検索と意味検索の両立重みや統合方法の調整が必要になる場合がある

キーワード検索との違い

キーワード検索は、検索した語句と文書の内容との一致度を中心に情報を探します。

そのため、名称や番号を正確に指定したい場面では非常に有効です。

ハイブリッド検索では、そこへベクトル検索を加えます。同じ表現がない文書も、候補に加えられる可能性があります。

ベクトル検索・セマンティック検索との違い

ベクトル検索は、データをベクトルで表現し、その距離や類似度を利用して検索する方法です。

文章の意味を利用するため、「意味検索」の文脈で説明されることがあります。ただし、セマンティック検索が指す技術は製品ごとに異なります。ベクトル検索と常に同義とは限りません。

つまり、意味ベースの検索とキーワードベースの検索を組み合わせるのが特徴です。

キーワード検索・ベクトル検索・ハイブリッド検索の違い

ハイブリッド検索のメリット

ハイブリッド検索の主なメリットは、異なる検索方法の得意分野を組み合わせられることです。

固有名詞や型番と意味の近さを両方拾いやすい

ベクトル検索だけでは、型番や固有名詞の順位が期待どおりにならない場合があります。これらは厳密な表記が重要だからです。

そこでキーワード検索も利用すれば、文字として一致する情報を評価できます。

逆に、検索者が元の文書とは違う表現を使うこともあります。その場合、ベクトル検索で関連文書を補える可能性があります。

検索表現が違っても関連情報を探しやすい

文書には「経費削減」と書かれているとします。利用者は「コストを減らす方法」と検索するかもしれません。

文字だけを見ると異なる表現ですが、意味は近い内容です。

ベクトル検索を併用することで、このような言い換えにも対応しやすくなります。

RAGの情報検索にも活用できる

ハイブリッド検索は、RAGで生成AIへ渡す参考情報を探す用途にも利用できます。

RAG(検索拡張生成)では、質問に関連する文書を検索し、その情報を生成AIの回答に利用します。そのため、必要な文書を適切に取得できるかどうかは重要です。

キーワード検索とベクトル検索を組み合わせれば、検索方法を一つに限定せず候補を探せます。Microsoftも、ハイブリッド検索を生成検索アプリケーションの情報取得に関係する仕組みとして説明しています。

ただし、ハイブリッド検索そのものが文章を生成するわけではありません。 あくまで関連情報を検索・取得するための方法です。

ハイブリッド検索の注意点

ハイブリッド検索にはメリットがありますが、導入すれば自動的に検索精度が高くなるとは限りません。

検索対象のデータや設定に合わせて評価する必要があります。

組み合わせれば必ず精度が上がるわけではない

キーワード検索とベクトル検索の両方から不要な候補が集まれば、最終的な検索結果も改善しない可能性があります。

そのため、「ハイブリッド検索を使ったか」だけではなく、実際の質問に対して必要な情報が上位に表示されるかを確認することが重要です。

検索方式の重みや統合方法で結果が変わる

システムによっては、キーワード検索とベクトル検索のどちらを重視するか設定できます。

たとえばWeaviateでは、ハイブリッド検索でベクトル検索側の重みを調整でき、結果を融合する方法も選択できます。

どちらを強くするべきかは、検索するデータや目的によって異なります。

元データやEmbeddingの品質にも左右される

ベクトル検索を利用する場合、検索対象の文章をどのように分割するか、どのEmbeddingモデルを使うかなども結果へ影響します。

また、元となる文書そのものに必要な情報がなければ、検索方法を工夫しても正しい情報は取得できません。

検索手法だけでなく、検索対象となるデータの整理も重要です。

ハイブリッド検索の使い方

ハイブリッド検索をシステムへ導入するときは、キーワード検索とベクトル検索の両方を使える状態にし、結果を統合して評価するのが基本的な流れです。

具体的な設定方法は利用する検索サービスによって異なります。

検索対象を準備する

最初に、検索する文書やデータを検索インデックスへ登録します。

ベクトル検索を使う場合は、文章などをEmbeddingモデルでベクトルへ変換し、検索できる状態にする必要があります。

キーワード検索とベクトル検索を実行する

ユーザーが質問すると、その質問を利用してキーワード検索とベクトル検索を行います。

一つの検索リクエスト内で両方を実行できるサービスもあります。

検索結果を統合する

次に、2種類の検索で得られた結果を融合します。

順位を利用するRRFや、正規化したスコアを組み合わせる方式などがあり、実際の方式は検索システムによって異なります。

必要に応じて、その後にリランキングを行い、候補の順序をさらに調整する方法もあります。

実際の質問で検索品質を評価する

最後に、実際の利用場面に近い質問を使って検索結果を確認します。

「ハイブリッド検索を導入したから完了」ではなく、必要な情報が上位に出てくるかを評価することが大切です。

特に、固有名詞を含む質問、曖昧な自然文、言い換えを含む質問など、異なる種類の検索条件を試すと違いを確認しやすくなります。

ハイブリッド検索が向いている具体例

ハイブリッド検索は、正確なキーワードと文章の意味の両方が重要になる検索に向いています。

たとえば、社内ナレッジ検索では、社員が正式な文書名を知らずに自然な文章で質問することがあります。一方で、商品コードや部署名などを正確に検索したい場面もあります。

ECサイトの商品検索でも、「ABC-123」のような型番を指定する利用者と、「軽くて持ち運びやすいパソコン」のような自然な表現で探す利用者がいます。

さらに、RAGを利用した社内AIでは、ユーザーの質問に関連する資料を幅広く探しつつ、固有名詞や専門用語も正確に扱う必要があります。

このように、一種類の検索方法だけでは取りこぼしが起きやすい場面で、ハイブリッド検索が選択肢になります。

ハイブリッド検索に関するよくある質問

ハイブリッド検索とは一言でいうと何ですか?

キーワード検索とベクトル検索など、異なる検索方法を組み合わせて結果を出す検索手法です。

生成AIやRAGの分野では、文字の一致を得意とするキーワード検索と、意味の近さを利用するベクトル検索を組み合わせる方法がよく使われます。

ハイブリッド検索とベクトル検索は同じですか?

同じではありません。

ベクトル検索は、ベクトル間の類似度などを利用して関連情報を探す検索方法です。

ハイブリッド検索は、そのベクトル検索とキーワード検索などを組み合わせて利用します。

ハイブリッド検索とRAGは同じですか?

同じではありません。

ハイブリッド検索は情報を検索する方法です。一方、RAGは外部から取得した情報を利用して生成AIの回答を補強する仕組みです。

RAGの検索部分にハイブリッド検索を利用することがあります。

ハイブリッド検索ならキーワード検索は不要になりますか?

不要になるわけではありません。

むしろ、ハイブリッド検索ではキーワード検索の強みを残しながら、ベクトル検索の強みも利用します。

製品番号、固有名詞、専門用語などを正確に探したい場合、キーワード検索が重要になることがあります。

ハイブリッド検索を使えば検索精度は必ず上がりますか?

必ず上がるとは限りません。

検索対象のデータ、Embeddingモデル、キーワード検索の設定、検索結果の統合方法などによって結果は変わります。

実際の利用場面を想定した質問で検索品質を評価し、必要に応じて設定を調整することが重要です。

まとめ

ハイブリッド検索とは、キーワード検索とベクトル検索など、特徴の異なる検索方法を組み合わせる手法です。

キーワード検索は固有名詞や型番などの正確な検索に強く、ベクトル検索は言い換えや意味の近い情報を見つけやすいという特徴があります。ハイブリッド検索では、それぞれの検索結果を統合することで両方の長所を生かします。

生成AIの分野では、RAGで参考情報を取得する方法としても活用できます。

ただし、利用すれば必ず検索精度が高まるわけではありません。検索対象のデータや目的に合わせ、検索方式の重み、結果の統合方法、Embeddingなどを調整し、実際の質問で評価することが重要です。

関連用語

出典・参考情報

この記事を書いた人

田中和馬のアバター 田中和馬 株式会社エヌ・ケーパートナーズ/AIスクールガイド|AWL編集長

株式会社エヌ・ケーパートナーズが運営する「AIスクールガイド|AWL」編集長。10年以上にわたり、SEOメディアの立ち上げ・構築・運用に携わってきました。

2024年頃から生成AIを独学で学び始め、その後、生成AIスクールでも体系的に学習。現在はChatGPT、Gemini、Claudeなどを活用し、ディープリサーチによる情報収集、マーケティング企画、記事構成・文書作成、メール作成、業務自動化などに日常的に取り組んでいます。

また、生成AIをWebサイトの企画・制作、コーディング、デザインにも活用。エンジニアやデザイナーの業務領域を理解しながら、自らディレクションを行い、メディアの設計から制作・運用まで一貫して担当しています。生成AIスクール・講座の調査、比較基準の設計、記事編集・品質管理も担当しています。

目次